日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブタジエンゴム」の意味・わかりやすい解説
ブタジエンゴム
ぶたじえんごむ
butadiene rubber
汎用(はんよう)合成ゴムの一種。ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称はBR。ブタジエンの重合体(ポリブタジエン)で、次の3種類に大別される。
(1)高シスBR ブタジエンのツィーグラー(チーグラー)系触媒による溶液重合で合成されるシス-1,4結合が96%以上の立体規則性ポリマー(重合体)である。スチレン・ブタジエンゴムに次いで多く使われる汎用ゴムで、天然ゴムと同じように加硫できる。反発弾性が大きく、耐摩耗性や低温特性が優れ、透明性・耐老化性がよく、動的発熱が小さい。欠点は高伸度で結晶化しがたく、加工性、引裂き強度が劣ることである。天然ゴムと混合してタイヤ、ベルト、履き物、ホース、ゴルフボール、工業用品などに用いる。
(2)低シスBR 有機リチウム触媒による溶液重合か乳化重合によって合成され、シス-1,4結合が10~35%含まれる。高シスBRと類似した性質であるが、低温特性がやや低い。高シスBRと同じ汎用ゴムとして使われるほか、プラスチックの耐衝撃性や低温特性を改良するために用いられる。乳化重合によってつくられる低シスBRラテックスはポリスチレンの耐衝撃性改良ブレンド用(ABS樹脂の一成分)に使われる。
(3)1,2BR ツィーグラー系または有機金属‐極性化合物系触媒による溶液重合で合成され、1,2結合が90%以上の立体規則性ポリマーである。結晶度を調節すると熱可塑性エラストマーとなる。履物、ラップフィルム、スポンジ製品などの用途がある。
[福田和吉]