ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブトロス=ガリ」の意味・わかりやすい解説
ブトロス=ガリ
Boutros-Ghali, Boutros
[没]2016.2.16. カイロ
エジプトの法学者,政治家。国連事務総長(在任 1992~96)。コプト教徒(→コプト教会)の名門に生まれた。1946年カイロ大学を卒業,1949年フランスのパリ大学で国際法の博士号を取得。カイロ大学で国際法と国際関係論の教授を務め,アメリカ合衆国やヨーロッパ,インド,中東,アフリカの大学などでも教鞭をとった。1977年外務担当の国務大臣に就任し,ムハマド・アンワル・サダト大統領の歴史的なイスラエル訪問に随行した(→キャンプデービッド合意)。1991年副首相に就任。1979~91年,国際連合の国際法委員会の委員を務めた。冷戦終結後の 1992年1月,初のアラブ,アフリカ出身の国連事務総長(第6代)に就任。安全保障理事会から,国連憲章の枠内での防止外交・平和造成・平和維持における国連の機能を強化する方法についての勧告を求められ,同 1992年6月に報告書「平和のための課題」を発表して大きな反響を巻き起こした。在任中は精力的に国連の紛争調停を支え,ボスニア・ヘルツェゴビナ,ソマリア,ルワンダにおける平和維持活動 PKOを監督した。1996年,ブトロス=ガリの強いリーダーシップに不満をいだいていたアメリカが,安全保障理事会で拒否権を行使して再選を阻止したため 1期で国連事務総長の座をおりた。のち,国連活動への市民参画の深化を目指す,国連議員総会設立に向けた運動を支援した。
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