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広義には内閣の構成員(閣僚)であるが、狭義には内閣総理大臣以外の閣僚をいう。第二次世界大戦後の日本では議院内閣制が憲法によって明確化されているので、国務大臣は国会に対して連帯して責任を負う。この点、戦前の国務大臣が統治権を総攬(そうらん)する天皇の権能を個々に補佐(補弼(ほひつ))していたのとは異なる。国務大臣の過半数は国会議員でなければならず(憲法68条)、また日本の場合、国務大臣はすべて閣僚で常時閣議に出席できるので、イギリスのように内閣の構成員である20余名の国務大臣(閣内相、閣僚)とそうでない国務大臣(閣外相)が存在するのとは異なる。さらに、アメリカの長官(大臣)のように、国会議員以外から長官が任命されるのとも異なる。
内閣総理大臣は国務大臣を任免するが、その場合には天皇の認証が必要である。第二次世界大戦前の陸・海軍大臣には現役の軍人があてられたが、戦後は、すべての国務大臣は文民でなければならないとされている(憲法66条2項)。この文民規定については、戦前に職業軍人でなかった者という解釈がとられていたが、現在では、著しく軍国主義的な思想の持ち主でない者というように変わってきている。
国務大臣は、内閣総理大臣を除き原則的に14名以内(特別の場合17人以内)と定められ、内閣府の長としての内閣総理大臣および各省の長としての大臣は、とくに「主任の大臣」とよばれ、行政各省の行政事務を指揮監督する。そのほか、内閣官房長官、各庁長官、特定の行政事務を分担管理しない無任所大臣もいる。国務大臣は国会に出席する権利と義務を有し、衆議院において内閣不信任決議案が可決され、または信任決議案が否決されれば、内閣は10日以内に総辞職するか、国会を解散しなければならないから、いずれにせよ、国務大臣はその地位を失う。国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ訴追されないという特権をもつ。国務大臣の公務員としての地位は特別職である。
[田中 浩]
日本国憲法における内閣の構成員(閣僚)。広義では内閣総理大臣を含み(憲法99条など),狭義では内閣総理大臣を除いた他の構成員を指す(68条など)。狭義の国務大臣は内閣総理大臣によって任命され,内閣総理大臣によって任意に罷免されうる。任免には天皇の認証を要する。国務大臣の数は1984年現在,内閣総理大臣を除いて20名以内と定められ,その過半数は国会議員でなければならない(内閣法2条,憲法68条1項)。また,内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければならない(憲法66条2項)。また,その在任中は,内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない(75条)。国務大臣は内閣を構成して行政権を行使し,国会に対して連帯して責任を負う。内閣総理大臣は国務大臣の中から各省の長である各省大臣を任命する(内閣総理大臣と各省大臣とを特に〈主任の大臣〉という)。この国務大臣各省長官同一人制によって合議体である内閣とその統轄下にある行政組織とが結びつけられるが,各大臣が各省長官の立場にとらわれ,内閣における総合調整を困難にしているとの批判がなされることがある。なお(広義の)国務大臣がすべて主任の大臣になるわけではなく,内閣官房長官,各庁長官になるほか,特定の行政事務を分担管理しない大臣も認められている(〈無任所大臣〉の項参照)。国務大臣は両議院に出席し,発言したり,閣議を求め,閣議に出席するなどの権限を有し,各省大臣など行政機関の長であれば,行政機関の事務を統括するなどの権限を有する。
国務大臣の名称は明治憲法から継承したものであるが,その性格はまったく異なる。すなわち,明治憲法における国務大臣は,統治権の主体である天皇の権能の行使を補佐するものであったが,日本国憲法の国務大臣は行政権の主体である内閣を構成するものである。統治機構における行政部の機構は国によって異なり,日本の国務大臣に相当する職についても,その数や地位などが各国で多かれ少なかれ異なっている。日本と同じ議院内閣制のイギリスでは20余名の閣内大臣の外に閣外大臣が存在する。大統領制のアメリカでは各省長官などの合議体である内閣ではなく,大統領が行政権の主体である。
→内閣
執筆者:橋本 信之
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内閣を構成する閣僚。広義には内閣総理大臣をも含む。大日本帝国憲法では,各国務大臣の天皇に対する単独輔弼(ほひつ)責任制がとられていたが,日本国憲法では内閣の構成員として国会に対し連帯して責任を負う。任免権は内閣総理大臣にあり,任免には天皇の認証を必要とする。また,国務大臣の過半数は国会議員で構成し,同時に文民でなければならない。第2次大戦前の定数は16人であったが,現内閣法では原則14人以内だが,3人増加もできる(復興庁設置中は「15人」と「18人」)。国務大臣にはそれぞれの省庁の行政事務を分担する主務の大臣と特命担当大臣がある。所管の行政事務にかかわる法律や政令審議のため閣議開催を求めたり,機関委任事務について自治体の長を監督する。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
… 議院内閣制の母国といわれるイギリスでは,今日大臣職は100を超えている。首相,各省の長たる省大臣Departmental Ministers,国璽尚書や枢密院議長のような伝統的な職に就く非省大臣Non‐Departmental Ministers,司法の責任者たる大法官Lord Chancellorその他,省大臣を補佐する担当大臣Minister of Stateや政務次官などに分類できる。このうち首相,省大臣,非省大臣,大法官によって通常は内閣が構成され,これらの職を総称して閣内相,他を閣外相と呼ぶ。…
…現代は日本国憲法65条により行政権は内閣に属し,その首長である内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決によって指名され天皇に任命される。その他の国務大臣は内閣総理大臣に任命され天皇が認証する。国務大臣は通常行政各部の長として国政事務を分担するが,いずれの行政機関の長にも就任しない国務大臣〈無任所大臣〉を置くこともできる。…
※「国務大臣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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