ブルックス(読み)ぶるっくす(英語表記)Van Wyck Brooks

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブルックス」の意味・わかりやすい解説

ブルックス
Brooks, Richard

[生]1912.5.18. ペンシルバニア,フィラデルフィア
[没]1992.3.11. カリフォルニア,ビバリーヒルズ
アメリカ合衆国の映画脚本家,監督,プロデューサー文芸作品を脚色した『エルマー・ガントリー』Elmer Gantry(1960,アカデミー賞脚本賞)のように社会派リアリズムがきわだつ作風を特徴とする。フィラデルフィアのテンプル大学に学び,スポーツ記者をふりだしにラジオ番組や映画の脚本執筆に参加,第2次世界大戦中の 1943~45年は海兵隊員として出征した。1945年に出版した小説 "The Brick Foxhole"が,ユダヤ人差別を主題とする『十字砲火』Crossfire(1947)として映画化される。その後,映画『真昼の暴動』Brute Force(1947),『キー・ラーゴ』Key Largo(1948)などの脚本が注目され,1950年に『危機の男』Crisisの脚本と監督に抜擢された。『デッドライン U.S.A.』Deadline U.S.A.(1952,監督,脚本)の成功を経て,エバン・ハンターの小説を原作とした『暴力教室』The Blackboard Jungle(1955,脚本,監督)で,都会の貧困地区で 10代の生徒たちを相手に奮闘する教師を描いた。小説を映画化した『カラマゾフの兄弟』The Brothers Karamazov(1958),『冷血』In Cold Blood(1967),『ミスター・グッドバーを探して』Looking for Mr. Goodbar(1977)などのほか,テネシー・ウィリアムズの戯曲を映画化した『熱いトタン屋根の猫』Cat on a Hot Tin Roof(1958),『渇いた太陽』Sweet Bird of Youth(1961)などの作品がある。プロデューサーとして独立 1年後の作品『プロフェッショナル』The Professionals(1966)はブルックスが監督した西部劇のなかで最も高く評価された。

ブルックス
Brooks, Mel

[生]1926.6.28. ニューヨーク,ブルックリン
アメリカ合衆国の映画監督,制作者,脚本家,俳優。本名 Melvin Kaminsky。1944年にバージニア州立軍事学校に入学したが,すでに物まね芸人,ピアノ・ドラム奏者として活躍していた。第2次世界大戦に従軍後,芸人兼演出家となる。1949年,コメディアンのシド・シーザーが主役を務めるテレビシリーズに放送作家として参加。1960年,シーザーやカール・ライナーと出演した舞台のレコード『2000イヤー・オールド・マン』が大ヒット。1963年,脚本とナレーターを務めたアニメーション『ザ・クリティック』The Critic(1963)がアカデミー賞短編アニメーション映画賞を受賞。1965年にはバック・ヘンリーとともにテレビのシチュエーション・コメディ『それ行けスマート』Get Smartを制作。映画『プロデューサーズ』The Producers(1968)ではアカデミー賞脚本賞を受賞した。監督 3作目の『ブレージングサドル』Blazing Saddles(1974)によってハリウッドでの名声を不動のものとした。『ヤング・フランケンシュタイン』Young Frankenstein(1974)ではアカデミー賞脚色賞にノミネート。2001年に『プロデューサーズ』を元にしたブロードウェーミュージカルに制作者,作曲家,原作者としてかかわり,トニー賞を受賞した。2009年ジョン・F.ケネディ・センター名誉賞を受賞。またブルックスフィルムズの設立者として『エレファント・マン』The Elephant Man(1980)など優れた作品を制作した。

ブルックス
Brooks, James L.

[生]1940.5.9. ニューヨーク,ブルックリン
アメリカ合衆国の脚本家,映画監督,制作者。フルネーム James Lawrence Brooks。テレビと映画で活躍し,登場人物をきわだたせて,温かなユーモアと真に迫る感情を織り交ぜて描く群像劇に定評がある。ニューヨーク大学退学後,1964年に CBSニュース(→CBS)に入社。のちにドキュメンタリーやシチュエーション・コメディの作家となり,さまざまな作品で高い評価を受ける。1980年代に映画界に進出し,コメディやドラマの脚本,監督,制作を数多く手がけた。まず『愛と追憶の日々』Terms of Endearment(1983)でアカデミー賞の作品賞,監督賞,脚色賞ほか全 5部門を受賞した。さらに,テレビ局報道室の悲喜こもごもを生き生きと描いた『ブロードキャスト・ニュース』Broadcast News(1987)で絶賛された。気難しい老人とシングルマザーの恋愛もようを描いた『恋愛小説家』As Good As It Gets(1997)では,主演のジャック・ニコルソンとヘレン・ハントがそれぞれアカデミー賞を受賞した。

ブルックス
Brooks, Van Wyck

[生]1886.2.16. ニュージャージー,プレーンフィールド
[没]1963.5.2. コネティカット,ブリッジウォーター
アメリカの批評家。ハーバード大学卒業後イギリスに渡り,ジャーナリズムに関係するとともに,最初の著作『清教徒の酒』 The Wine of the Puritans (1908) を発表。その後,出版関係の仕事に従事しながら,アメリカ文学論,作家論を次々に発表。ピューリタニズムの伝統を批判した『アメリカ,成年期に達す』 America's Coming-of-Age (15) ,精神分析を用いた評伝『マーク・トウェーンの試練』 The Ordeal of Mark Twain (20,改訂 33) ,『ヘンリー・ジェームズの巡礼』 The Pilgrimage of Henry James (25) ,『エマソンの生涯』 The Life of Emerson (32) ののち,『花開くニューイングランド』 The Flowering of New England,1815-1865 以下5巻から成るアメリカ文学史『創り手と発見者』 Makers and Finders: A History of the Writers in America,1800-1915 (36~52) を発表した。

ブルックス
Brooks, Cleanth

[生]1906.10.16. ケンタッキー,マレー
[没]1994.5.10. コネティカット,ニューヘーブン
アメリカの批評家。バンダービルト,テュレーン,オックスフォードの各大学に学ぶ。のちルイジアナ州立大学で教えている間に,R.P.ウォレンとともに『サザン・レビュー』誌を編集 (1935~42) ,同誌を新批評の牙城たらしめた。 1947年からエール大学で教鞭をとる。すぐれた大学教科書『詩の理解』 Understanding Poetry (38) ,『小説の理解』 Understanding Fiction (43) をウォレンと共著,評論集『現代詩と伝統』 Modern Poetry and the Tradition (39) ,『よくつくられた壺』 The Well-Wrought Urn (47) ,『造型の喜び』A Shaping Joy (71) ,評伝『フォークナー』 William Faulkner: the Yoknapatawpha Country (63)などを出版した。 85年来日。

ブルックス
Brooks, Gwendolyn (Elizabeth)

[生]1917.6.7. カンザス,トピーカ
[没]2000.12.3. イリノイ,シカゴ
アメリカの黒人女流詩人。シカゴで育ち,1936年同地のウィルソン・ジュニアカレッジを卒業。市内に住むアフリカ系アメリカ人のコミュニティー向けに書かれた新聞『シカゴ・ディフェンダー』に詩を発表。処女詩集『ブロンズビルの街路』A Street of Bronzeville (1945) ののち,『アニー・アレン』 Annie Allen (49) で黒人として初めてピュリッツァー賞を受賞した。ほかに,小説『モード・マーサ』 Maud Martha (53) ,詩『豆を食べる人々』 The Bean Eaters (60) ,『メッカにて』 In the Mecca (68) ,『手招き』 Beckonings (75) など。都会で暮す黒人の日常生活をテーマにした作品を多く残した。サンドバーグの跡を継いで「イリノイの桂冠詩人」と称せられる。

ブルックス
Brooks, Preston Smith

[生]1819.8.6. サウスカロライナ
[没]1857.1.27. ワシントンD.C.
アメリカの政治家。民主党の連邦下院議員 (1853~57) 。 1856年伯父 P.バトラーの名をあげて奴隷制を攻撃した連邦上院議員 C.サムナーを杖でたたき伏せ負傷させた。この事件は奴隷制をめぐる南北の対立を激化させ,彼は南部の英雄とされた。

ブルックス

「ブルークス」のページをご覧ください。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルックス」の意味・わかりやすい解説

ブルックス(Cleanth Brooks)
ぶるっくす
Cleanth Brooks
(1906―1994)

アメリカの学者、批評家。エール大学教授。文芸作品(とくに詩)は文学史や作者の伝記的事実などから切り離して、作品自体の形式、構造に関心を集中する分析的な、いわゆる「新批評主義(ニュー・クリティシズム)」を唱道した中心人物の一人。『現代詩と伝統』(1939)、『見事に作られた壺(つぼ)』(1947)では多数の詩作品を扱い、「パラドックス」や「アイロニー」を駆使して分析、独自の批評を展開した。またウォーレンとの共著『詩の理解』(1938)、『小説の理解』(1943)、ハイルマンとの共著『戯曲の理解』は、その精緻(せいち)な分析批評で、一般の大学の文学教授法に大きな影響を与えた。『ウィリアム・フォークナー――ヨクナパトーファの世界』(1963)、『ウィリアム・フォークナー――ヨクナパトーファをめざして、そしてそれを越えて』(1978)は代表的なフォークナー研究書。

[大津栄一郎]

『猪俣浩・大沢正佳訳『現代詩と伝統』(1960・南雲堂)』


ブルックス(Van Wyck Brooks)
ぶるっくす
Van Wyck Brooks
(1886―1963)

アメリカの批評家、文学史家。ハーバード大学卒業。アメリカ精神の不毛の根源としてのピューリタニズムをつく『ピューリタンの酒』(1909)で批評活動を展開。過去のアメリカ文学を、ピューリタニズムと実際主義の二元論から批判的にとらえ、その総合の世界をホイットマンに認める『アメリカ青年期に達す』(1915)で注目を浴びる。そののち同様の主旨からマーク・トウェーンを論じる『マーク・トウェーンの試練』(1920)などを書いた。36年から、アメリカ文学の優れたプロセスをとらえる一連の文学史的批評、『花ひらくニュー・イングランド』(1936)に始まり、『自信の歳月』(1952)に至る五部作を発表した。

[大橋健三郎]

『石川欣一訳『花ひらくニュー・イングランド』(1951・三笠書房)』

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