ブルックス(英語表記)Louise Brooks

改訂新版 世界大百科事典 「ブルックス」の意味・わかりやすい解説

ブルックス
Louise Brooks
生没年:1900-85

アメリカの映画女優。〈ファム・ファタル(運命の女,妖婦)〉の代名詞にすらなっている娼婦ルルを演じた女優として不滅の名を残し,〈断髪(ボブ・ヘア)のバンプ〉と呼ばれる伝説的なスターである。カンザス州生れ。15歳のときからニューヨークで踊りを学び,〈レビュー王〉といわれた,ブロードウェーの大プロデューサー,フローレンツ・ジーグフェルド(1867-1932)に認められて彼のショー〈ジーグフェルド・フォリーズ〉の踊子となる。ハーバート・ブレノン監督《或る乞食の話》(1925)の端役で映画デビュー,〈ボブ・ヘア〉スタイルを売りものに〈フラッパー〉と呼ばれた当時のモダン・ガールを型どおりに演じつづけたのち(《百貨店》1926,《夜会服》1927,等々),ハワード・ホークス監督《港々に女あり》(1928),ウィリアム・A.ウェルマン監督《人生の乞食》(1928)で才能ある女優として認められる。しかし真価を示した代表作は,G.W.パプスト監督に招かれて出演したドイツ映画《パンドラの箱》《淪落の女の日記》(ともに1929)であり,とくに《パンドラの箱》(原作はドイツの劇作家フランク・ウェーデキントの連作戯曲《地霊》《パンドラの箱》)で演じた娼婦ルルによって世界的に注目を浴び,その後もルルはウェーデキントの原作よりもむしろこの映画によって伝説的な存在となり,のちにジャン・リュック・ゴダールは,彼の映画《男と女のいる舗道》(1962)でアンナ・カリーナが演じた娼婦ナナに,ルルのヘア・スタイルとメーキャップをさせたといわれる。ブルックス本人は,パプスト原案,ルネ・クレール脚本によるフランス映画《ミス・ヨーロッパ》(クレールが監督する予定だったがプロデューサーと折り合わず,イタリア人のアウグスト・ジェニナ監督作品になった)に出演したあとハリウッドに帰るが,作品に恵まれず,ナイトクラブのダンサーやセールスガールになるなど不遇の時代を送り,40年代後半から世間の目を避けて隠棲するうち,50年代半ばに《パンドラの箱》を中心にした旧作がヨーロッパとアメリカでリバイバル上映されたのを機に〈ルル・フィーバー〉が高まり,55年には〈シネマテーク・フランセーズ〉のアンリ・ラングロアが映画生誕60年記念展に〈不滅の女優〉としてブルックスの写真を飾り,またサラ・ベルナール主演の《ギーズ公の暗殺》(1908)がつくられてから50年後の記念の催しにも彼女を招待した。こうしてルイズ・ブルックスとその神話は復活した。

 父が蔵書家であったため幼いころから読書の習慣があり,ハリウッドでただ1人の〈本を読む俳優〉といわれ,〈文筆家〉としても知られ,68歳のとき書いた自伝的な回想録《ハリウッドのルル》(1974)はベストセラーになった。
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ブルックス
Van Wyck Brooks
生没年:1886-1963

アメリカの文芸批評家。主著《アメリカ成年期に達す》(1915)で,ピューリタニズムと実利主義,実生活と芸術の二元分裂が超克されるべきことを説く。その後のマーク・トウェーン論,ヘンリー・ジェームズ論も,同じアメリカ的な二元分裂を指摘した作家論である。その他,アメリカ作家とその時代を印象主義的な筆致で扱った《花開くニューイングランド》以下5巻の文学史(1936-52)がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブルックス」の意味・わかりやすい解説

ブルックス
Brooks, Richard

[生]1912.5.18. ペンシルバニア,フィラデルフィア
[没]1992.3.11. カリフォルニア,ビバリーヒルズ
アメリカ合衆国の映画脚本家,監督,プロデューサー。文芸作品を脚色した『エルマー・ガントリー』Elmer Gantry(1960,アカデミー賞脚本賞)のように社会派リアリズムがきわだつ作風を特徴とする。フィラデルフィアのテンプル大学に学び,スポーツ記者をふりだしにラジオ番組や映画の脚本執筆に参加,第2次世界大戦中の 1943~45年は海兵隊員として出征した。1945年に出版した小説 "The Brick Foxhole"が,ユダヤ人差別を主題とする『十字砲火』Crossfire(1947)として映画化される。その後,映画『真昼の暴動』Brute Force(1947),『キー・ラーゴ』Key Largo(1948)などの脚本が注目され,1950年に『危機の男』Crisisの脚本と監督に抜擢された。『デッドライン U.S.A.』Deadline U.S.A.(1952,監督,脚本)の成功を経て,エバン・ハンターの小説を原作とした『暴力教室』The Blackboard Jungle(1955,脚本,監督)で,都会の貧困地区で 10代の生徒たちを相手に奮闘する教師を描いた。小説を映画化した『カラマゾフの兄弟』The Brothers Karamazov(1958),『冷血』In Cold Blood(1967),『ミスター・グッドバーを探して』Looking for Mr. Goodbar(1977)などのほか,テネシー・ウィリアムズの戯曲を映画化した『熱いトタン屋根の猫』Cat on a Hot Tin Roof(1958),『渇いた太陽』Sweet Bird of Youth(1961)などの作品がある。プロデューサーとして独立 1年後の作品『プロフェッショナル』The Professionals(1966)はブルックスが監督した西部劇のなかで最も高く評価された。

ブルックス
Brooks, Mel

[生]1926.6.28. ニューヨーク,ブルックリン
アメリカ合衆国の映画監督,制作者,脚本家,俳優。本名 Melvin Kaminsky。1944年にバージニア州立軍事学校に入学したが,すでに物まね芸人,ピアノ・ドラム奏者として活躍していた。第2次世界大戦に従軍後,芸人兼演出家となる。1949年,コメディアンのシド・シーザーが主役を務めるテレビシリーズに放送作家として参加。1960年,シーザーやカール・ライナーと出演した舞台のレコード『2000イヤー・オールド・マン』が大ヒット。1963年,脚本とナレーターを務めたアニメーション『ザ・クリティック』The Critic(1963)がアカデミー賞短編アニメーション映画賞を受賞。1965年にはバック・ヘンリーとともにテレビのシチュエーション・コメディ『それ行けスマート』Get Smartを制作。映画『プロデューサーズ』The Producers(1968)ではアカデミー賞脚本賞を受賞した。監督 3作目の『ブレージングサドル』Blazing Saddles(1974)によってハリウッドでの名声を不動のものとした。『ヤング・フランケンシュタイン』Young Frankenstein(1974)ではアカデミー賞脚色賞にノミネート。2001年に『プロデューサーズ』を元にしたブロードウェーミュージカルに制作者,作曲家,原作者としてかかわり,トニー賞を受賞した。2009年ジョン・F.ケネディ・センター名誉賞を受賞。またブルックスフィルムズの設立者として『エレファント・マン』The Elephant Man(1980)など優れた作品を制作した。

ブルックス
Brooks, James L.

[生]1940.5.9. ニューヨーク,ブルックリン
アメリカ合衆国の脚本家,映画監督,制作者。フルネーム James Lawrence Brooks。テレビと映画で活躍し,登場人物をきわだたせて,温かなユーモアと真に迫る感情を織り交ぜて描く群像劇に定評がある。ニューヨーク大学退学後,1964年に CBSニュース(→CBS)に入社。のちにドキュメンタリーやシチュエーション・コメディの作家となり,さまざまな作品で高い評価を受ける。1980年代に映画界に進出し,コメディやドラマの脚本,監督,制作を数多く手がけた。まず『愛と追憶の日々』Terms of Endearment(1983)でアカデミー賞の作品賞,監督賞,脚色賞ほか全 5部門を受賞した。さらに,テレビ局報道室の悲喜こもごもを生き生きと描いた『ブロードキャスト・ニュース』Broadcast News(1987)で絶賛された。気難しい老人とシングルマザーの恋愛もようを描いた『恋愛小説家』As Good As It Gets(1997)では,主演のジャック・ニコルソンとヘレン・ハントがそれぞれアカデミー賞を受賞した。

ブルックス
Brooks, Van Wyck

[生]1886.2.16. ニュージャージープレーンフィールド
[没]1963.5.2. コネティカット,ブリッジウォーター
アメリカの批評家。ハーバード大学卒業後イギリスに渡り,ジャーナリズムに関係するとともに,最初の著作『清教徒の酒』 The Wine of the Puritans (1908) を発表。その後,出版関係の仕事に従事しながら,アメリカ文学論,作家論を次々に発表。ピューリタニズムの伝統を批判した『アメリカ,成年期に達す』 America's Coming-of-Age (15) ,精神分析を用いた評伝『マーク・トウェーンの試練』 The Ordeal of Mark Twain (20,改訂 33) ,『ヘンリー・ジェームズの巡礼』 The Pilgrimage of Henry James (25) ,『エマソンの生涯』 The Life of Emerson (32) ののち,『花開くニューイングランド』 The Flowering of New England,1815-1865 以下5巻から成るアメリカ文学史『創り手と発見者』 Makers and Finders: A History of the Writers in America,1800-1915 (36~52) を発表した。

ブルックス
Brooks, Cleanth

[生]1906.10.16. ケンタッキー,マレー
[没]1994.5.10. コネティカット,ニューヘーブン
アメリカの批評家。バンダービルト,テュレーン,オックスフォードの各大学に学ぶ。のちルイジアナ州立大学で教えている間に,R.P.ウォレンとともに『サザン・レビュー』誌を編集 (1935~42) ,同誌を新批評の牙城たらしめた。 1947年からエール大学で教鞭をとる。すぐれた大学教科書『詩の理解』 Understanding Poetry (38) ,『小説の理解』 Understanding Fiction (43) をウォレンと共著,評論集『現代詩と伝統』 Modern Poetry and the Tradition (39) ,『よくつくられた壺』 The Well-Wrought Urn (47) ,『造型の喜び』A Shaping Joy (71) ,評伝『フォークナー』 William Faulkner: the Yoknapatawpha Country (63)などを出版した。 85年来日。

ブルックス
Brooks, Gwendolyn (Elizabeth)

[生]1917.6.7. カンザス,トピーカ
[没]2000.12.3. イリノイ,シカゴ
アメリカの黒人女流詩人。シカゴで育ち,1936年同地のウィルソン・ジュニアカレッジを卒業。市内に住むアフリカ系アメリカ人のコミュニティー向けに書かれた新聞『シカゴ・ディフェンダー』に詩を発表。処女詩集『ブロンズビルの街路』A Street of Bronzeville (1945) ののち,『アニー・アレン』 Annie Allen (49) で黒人として初めてピュリッツァー賞を受賞した。ほかに,小説『モード・マーサ』 Maud Martha (53) ,詩『豆を食べる人々』 The Bean Eaters (60) ,『メッカにて』 In the Mecca (68) ,『手招き』 Beckonings (75) など。都会で暮す黒人の日常生活をテーマにした作品を多く残した。サンドバーグの跡を継いで「イリノイの桂冠詩人」と称せられる。

ブルックス
Brooks, Preston Smith

[生]1819.8.6. サウスカロライナ
[没]1857.1.27. ワシントンD.C.
アメリカの政治家。民主党の連邦下院議員 (1853~57) 。 1856年伯父 P.バトラーの名をあげて奴隷制を攻撃した連邦上院議員 C.サムナーを杖でたたき伏せ負傷させた。この事件は奴隷制をめぐる南北の対立を激化させ,彼は南部の英雄とされた。

ブルックス

「ブルークス」のページをご覧ください。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルックス」の意味・わかりやすい解説

ブルックス(Cleanth Brooks)
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Cleanth Brooks
(1906―1994)

アメリカの学者、批評家。エール大学教授。文芸作品(とくに詩)は文学史や作者の伝記的事実などから切り離して、作品自体の形式、構造に関心を集中する分析的な、いわゆる「新批評主義(ニュー・クリティシズム)」を唱道した中心人物の一人。『現代詩と伝統』(1939)、『見事に作られた壺(つぼ)』(1947)では多数の詩作品を扱い、「パラドックス」や「アイロニー」を駆使して分析、独自の批評を展開した。またウォーレンとの共著『詩の理解』(1938)、『小説の理解』(1943)、ハイルマンとの共著『戯曲の理解』は、その精緻(せいち)な分析批評で、一般の大学の文学教授法に大きな影響を与えた。『ウィリアム・フォークナー――ヨクナパトーファの世界』(1963)、『ウィリアム・フォークナー――ヨクナパトーファをめざして、そしてそれを越えて』(1978)は代表的なフォークナー研究書。

[大津栄一郎]

『猪俣浩・大沢正佳訳『現代詩と伝統』(1960・南雲堂)』


ブルックス(Van Wyck Brooks)
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Van Wyck Brooks
(1886―1963)

アメリカの批評家、文学史家。ハーバード大学卒業。アメリカ精神の不毛の根源としてのピューリタニズムをつく『ピューリタンの酒』(1909)で批評活動を展開。過去のアメリカ文学を、ピューリタニズムと実際主義の二元論から批判的にとらえ、その総合の世界をホイットマンに認める『アメリカ青年期に達す』(1915)で注目を浴びる。そののち同様の主旨からマーク・トウェーンを論じる『マーク・トウェーンの試練』(1920)などを書いた。36年から、アメリカ文学の優れたプロセスをとらえる一連の文学史的批評、『花ひらくニュー・イングランド』(1936)に始まり、『自信の歳月』(1952)に至る五部作を発表した。

[大橋健三郎]

『石川欣一訳『花ひらくニュー・イングランド』(1951・三笠書房)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「ブルックス」の解説

ブルックス Brooks, William Penn

1851-1938 アメリカの農学者。
1851年11月19日生まれ。明治10年(1877)来日し,札幌農学校で農学をおしえる。のち同校教頭,付属農園長を兼務。玉葱(たまねぎ),甜菜(てんさい)など北海道特産の作物の育成,土地改良を指導した。21年帰国,母校マサチューセッツ農科大教授となる。1938年3月8日死去。86歳。

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