日本大百科全書(ニッポニカ) 「プシッタコサウルス」の意味・わかりやすい解説
プシッタコサウルス
ぷしったこさうるす
psittacosaur
[学] Psittacosaurus mongoliensis
鳥盤目周飾頭(しゅうしょくとう)類(亜目)角竜類(つのりゅうるい)(下目)プシッタコサウルス科Psittacosauridaeに属する恐竜。中国、モンゴル、ロシアなどの白亜紀前期、約1億3000万年~9960万年前の地層から産出した全長1.5~2メートルの原始的な角竜類。角竜類であるが、まだ角や襟飾りを発達させていない。くちばしが短く、前上顎(じょうがく)骨の横突起が横に張り出している。ほかの角竜類とは違って、二肢歩行の草食恐竜であるのは、先祖筋(すじ)の厚頭竜類ないしは鳥脚(ちょうきゃく)類の特質を受け継いだものであろうが、プシッタコサウルス科以外の角竜類はすべて四肢歩行となった。頭が短く、オウムのようなくちばしの一部は角竜類独特の嘴骨(しこつ)よりなり、頬(ほお)に突起があり、頬歯(きょうし)は鋭く、襟飾りを示唆する小隆起を備えるなどが角竜類の仲間であることを表している。しかし、頭骨にみられる特殊化の進み方や、前肢の機能指が3本と減少していることなどからみると、後の角竜類の直接の祖先ではなく、共通の祖先から初期に分岐し特殊化したのであろう。強力なくちばしと頬歯をもつことから、ほかの恐竜には食べられないような固い植物、たとえば同時期に増加してきた被子植物の液汁豊富な繊維質の幹などをかじったのではないかと想像されている。プシッタコサウルスの2標本の肋骨腔(ろっこつくう)の内部で、小さな丸みをもった石がぎっしり密集した状態で発見されており、これら胃石(ガストロリス)は消化系の一部をなし、植物素材をより消化しやすくするために、擦りつぶす役をしていたと考えられる。プシッタコサウルス属には10種が認められている。そのなかには、異様なほど幅の広い顔面をもち突き出した頬が特徴的な種類もいたが、ディスプレー用のものであったかもしれない。属名の意味は「オウムに似たトカゲ」で、側面から見た鼻部の背が高くオウムに似た外形を示すことに由来する。アジアでは白亜紀前期の陸成層を特徴づける重要な化石である。なお、プシッタコサウルスの子供が、哺乳(ほにゅう)類レベノマムスRepenomamusに食べられたという化石の証拠が発見された。
[小畠郁生]
『NHK「恐竜」プロジェクト編、小林快次監修『恐竜vsほ乳類――1億5千万年の戦い』(2006・ダイヤモンド社)』