文教、医療・福祉、公共事業、外交・防衛などにかかる行政費用を、借金せずに、税収などの歳入だけでどの程度まかなえているかを示す指標。国の場合、国債などで調達した資金を除いた歳入(税収・税外収入)から、国債の元利払い費を除いた歳出を差し引いて計算する。つまり借金の影響を考慮せずに、単年度の収支均衡がとれているかどうかを示す。基礎的財政収支ともよばれるほか、英語の頭文字からPBと略されることもある。
バブル経済崩壊後のたび重なる経済対策や高齢化に伴う社会保障費の増大で、日本の国と地方をあわせた借金(長期債務残高)は2022年度(令和4)末時点で約1244兆円に上り、国内総生産(GDP)に対する比率は先進国で最悪の約220%に達する。プライマリーバランスを均衡(歳入と歳出の差をゼロにする)させても長期債務残高が減るわけではないが、均衡した場合、債務は利子率に応じて増えるが、税収も経済成長率に応じて増えるため、かりに利子率と成長率がほぼ同一であれば、債務残高のGDP比率は一定に保たれ、債務残高が雪だるま式に膨らむのを抑えられる。このためプライマリーバランスは財政健全化の目安の一つとされる。
日本はバブル経済が崩壊した1992年(平成4)以降、ずっとプライマリーバランスが赤字である。歴代政権はプライマリーバランスの黒字化を目標に掲げてきたが、ことごとく失敗し、目標年次の延期を繰り返している。1999年に小渕恵三(おぶちけいぞう)政権は2008年度(平成20)までに、2006年に小泉純一郎政権は2011年度に、2013年に安倍晋三(あべしんぞう)政権は2020年度にそれぞれ設定した。消費増税の先送りを経てふたたび2018年に安倍政権が2025年度に、プライマリーバランスの黒字化の目標を掲げた。しかし日本経済のデフレ進行、リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行などで、政府が財政出動による経済対策を講じたため、実現していない。2023年時点で、岸田文雄政権は「これまでの目標に取り組む」と2025年度に黒字化の目標を堅持しているが、内閣府は堅調な経済成長(名目成長率3.0%超、実質約2.0%程度)が続いても、黒字化は2026年度になると試算している。
[矢野 武 2023年7月19日]
(神野直彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 / 2008年)
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