プラムディア・アナンタ・トゥル(読み)ぷらむでぃああなんたとぅる(英語表記)Pramoedya Ananta Toer

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

プラムディア・アナンタ・トゥル
ぷらむでぃああなんたとぅる
Pramoedya Ananta Toer
(1925―2006)

インドネシアの作家。東部ジャワで教師の子として育つ。日本占領下では同盟通信社の記者。1940年代末から60年代初頭にかけて多くの小説を発表した。インドネシア文学史上注目すべき作品を数多く生んだ「45年世代」の象徴的な作家で、作品は多くの外国語に翻訳され、国際的にも多くの読者をもつ。65年の「九・三〇事件」政治犯としてブル島に10年間流刑され、79年に釈放。その後、20世紀初頭のオランダ植民地支配下のインドネシア民族の目ざめをテーマにした、壮大な歴史長編小説で四部作となる『人間大地』(1980)、『すべての民族の子』(1980)、『足跡』(1985)、『ガラスの家』(1988)を刊行した。代表作は『ゲリラ家族Keluarga Gerilja(1950)、『ブローラ物語』Ceri ta dari Blora(1952)など。また、日本軍占領下のインドネシアで従軍慰安婦にさせられた女性からの談話をおさめた『日本軍に棄(す)てられた少女たち』Perawan remaja dalam cengkeraman militer(2001)がある。2000年(平成12)に日本の福岡アジア文化賞大賞を受け、来日した。何度もノーベル文学賞の候補にあがっていた。

[佐々木信子]

『押川典昭訳『ゲリラの家族』『人間の大地』『すべての民族の子』『足跡』(『プラムディヤ選集』所収・1983~98・めこん)』『山田道隆訳『日本軍に棄てられた少女たち――インドネシアの慰安婦悲話』(2004・コモンズ)』

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改訂新版 世界大百科事典 の解説

プラムディア・アナンタ・トゥル
Pramoedya Ananta Toer
生没年:1925-2006 

インドネシアの作家。中部ジャワ生れ。独立戦争に参加,オランダ軍に捕らえられ,1947-49年の獄中生活で創作を始めた。故郷の自然と風物,父親との葛藤と家庭の崩壊をテーマにした《ブロラ物語》(1952),《夜市のようにではなく》(1951),独立革命の栄光悲惨を描く《ゲリラの家族》《夜明け》(ともに1950)などを発表,1945年世代を代表する作家の地位を確立した。56年の中国訪問を機に社会主義に傾斜インドネシア共産党の文化運動の理論的中心となった。九月三〇日事件で逮捕され,79年末までブル島に流刑された。収容所で,19世紀末から20世紀初頭のインドネシア民族の覚醒を描く四部作の歴史小説《人間の大地》《すべての民族の子》《足跡》《ガラスの家》を完成させ,釈放後発表して空前ベストセラーとなり,80年に第2部を出版したところで発禁処分を受けたが,日本語を含む約40カ国語に翻訳されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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