改訂新版 世界大百科事典 「ヘビクビガメ」の意味・わかりやすい解説
ヘビクビガメ (蛇頸亀)
snake-necked turtle
ヘビクビガメ科Chelidaeに属するくびの長いカメ類の総称。約10属37種が南アメリカ,オーストラリア,ニューギニアの淡水に分布する。大半は甲長20cm前後の小型であるが,奇異な頭頸(とうけい)部の形状で知られるマタマタChelus fimbriatusは甲長約40cmに達する。ヘビクビガメの名のとおり,頭頸部がヘビのように細長く,これを甲の縁に沿って水平に曲げ,背甲と腹甲の間に隠す。曲げた頭頸部は甲の間にある皮膚に覆われ一部が外から見えるが,水生であるため天敵が少なく安全は保たれる。餌はエビ,魚,カエルなどで長い頸部をのばしてとらえる。産卵は岸辺に穴を掘って行い,10~20個ほどを産む。ナンベイヘビクビガメHydromedusa tectiferaやオーストラリアナガクビガメChelodina longicollisなどは頭頸部がきわめて長いが,南アメリカ産のカエルアタマガメ属Phrynopsのものは頸部がずっと短く,大きな頭と幅の広い口をもつ。
これに対し,同じ曲頸類に属するヨコクビガメ科のカメ(ヌマヨコクビガメPelomedusa subrufaなど)は,頸部を垂直方向に少し引き入れてから横に曲げる。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報