日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘレラー」の意味・わかりやすい解説
ヘレラー
へれらー
Walter Höllerer
(1922―2003)
ドイツの詩人、批評家。1941年から45年まで、第二次世界大戦に従軍した。戦後の52年に処女詩集『別の客』を発表。戦地だったギリシアやイタリアやアフリカの風景や戦死者の光景を描いている。ブリッティングの影響が強い。次の『詩集』(1964)は戦後社会へ復帰した帰還兵の胸中、『季節の外で』(1967)は戦後の荒涼たる風景、『システム』(1969)は機械文明的な都市を題材にしている。73年に15年来の長編小説『象の時計』を完成。狭い職場に閉じこめられた人間が、外界とのコミュニケーションを求め、破滅する物語である。ベルリンの廃墟(はいきょ)を築いてつくった人工の山や、象のようにゆったりとした、ゆとりのある時間観念が登場する。78年の戯曲『鳥という鳥が』はアイスランドの自然を題材にして、狭く堅苦しい考えにとらわれた都会の人間の解放を願った作品。論文集『古典と現代の間――過渡期の文学における笑いと涙』(1958)と作家論『賛同、敵対』(1992)がある。
ヘレラーは1954年にドイツの代表的文芸誌『アクツェンテ』を創刊して、新進の育成と文学の国際化に貢献した。59年にベルリン工業大学の教授に就任。63年にベルリン文学コロキウム(LCB)を、77年には故郷のズルツバッハ=ローゼンベルクに戦後文学中心の資料館を創立した。
[飯吉光夫]
『ヴァルター・ヘレラー、ギュンター・グラス他著、飯吉光夫編訳『ベルリン・レミニセンス』(1992・思潮社)』▽『飯吉光夫著『傷ついた記憶――ベルリン、パリの作家』(1986・筑摩書房)』