ハッブル(読み)はっぶる(英語表記)Edwinn Powell Hubble

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハッブル」の意味・わかりやすい解説

ハッブル
はっぶる
Edwinn Powell Hubble
(1889―1953)

アメリカの天文学者銀河速度距離法則の発見者。ミズーリ州生まれ。保険事業家を父とし、シカゴ大学法科を1910年に卒業後、オックスフォード大学に進学、1913年帰国、弁護士となる。1914年天文学に興味を抱き、ヤーキス天文台で修業し、1917年シカゴ大学から学位を取得。たまたま第一次世界大戦で、従軍将校としてフランスに渡り、戦後、恩師ヘールの推薦でウィルソン山天文台に就職した。当初は60インチ(1.52メートル)反射鏡を専用して変光星、新星、ガス星雲の観測に精進したが、100インチ(2.54メートル)望遠鏡により1923年に渦状銀河中にケフェウス型変光星を確認し、光度周期関係を適用してそれらの距離を測定、いずれも銀河系外の恒星集団であることを明らかにした。銀河の観測データを豊かに蓄えて、銀河の類型を渦状のほかに楕円(だえん)状、無定形に分類したが、あえてその進化論的考察には深入りしなかった。重大な発見はそれらの銀河の後退速度の傾向を確認したことである。ドップラー原理を適用して、すでにスライファーらによってスペクトル線の赤方偏移から後退速度が測定されていたが、ハッブルはそれが銀河の距離に比例する事実を1929年に発見した。この「ハッブルの法則」は宇宙膨張論の観測的資料として基礎づけられている。第二次世界大戦後、パロマ山天文台の200インチ鏡の責任者となり、各国の学会・大学から栄誉を受けた。

[島村福太郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハッブル」の意味・わかりやすい解説

ハッブル
Hubble, Edwin Powell

[生]1889.11.20. ミズーリ,マーシュフィールド
[没]1953.9.28. カリフォルニア,サンマリノ
アメリカ合衆国の天文学者。1910年にシカゴ大学卒業後,イギリスのオックスフォード大学に留学。初め法律家となったが,1914~17年ヤーキズ天文台に勤務。第1次世界大戦に従軍ののち,1919年ウィルソン山天文台に移る。ウィルソン山天文台の 100インチ大望遠鏡などを用いて,銀河に含まれるケフェウス型変光星(セファイド)の距離を測定し,アンドロメダ銀河などの銀河銀河系の外に位置していることをつきとめた。また多数の銀河について距離を測定し,スペクトル分析を駆使することによって,1929年には銀河が銀河系からの距離に比例した速度で遠ざかっていること(→ハッブルの法則)を明らかにして宇宙膨張を発見するなど,宇宙論に大きな影響を与える業績を残した。(→宇宙の膨張

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