日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベアトリス・フーズ」の意味・わかりやすい解説
ベアトリス・フーズ
べあとりすふーず
Beatrice Foods, Inc.
アメリカの大手乳製品会社。1960年代から1980年代にかけての企業合併・買収(M&A)と多角化により、総合食品・消費財メーカーとなるが、1986年、LBOの手法を用いた企業買収専門の投資グループKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)に買収されたのち、事業部門ごとに転売された。
1889年、ネブラスカ州ベアトリスに自社工場を開設したバターや卵の販売業者フレーモント・バター・アンド・エッグ社が起源。その後の浮沈を経て1898年の再編によりベアトリス・クリーマリーThe Beatrice Creamery Co.に改組、ネブラスカ州リンカーンにクリーム工場を開設した。さらに1924年の再編により設立された同名の会社がベアトリスの直接の前身とされる。1946年、ベアトリス・フーズに社名を変更。その後多数の同業他社の買収・合併や、1960年代のメキシコやヨーロッパなどへの海外進出と相まって、ボーデン社に並ぶアメリカの代表的乳製品企業に発展する。
1940年代からの企業買収による多角化もますます活発化し、1970年代初めには乳製品のほか、スナック食品、菓子類、化学品、飼料、工業用品を製造、全米に配置した冷凍貯蔵庫など倉庫業も展開した。1972年には1894年創業の食肉製造加工会社エックリッチPeter Eckrich and Sonsを買収したほか、1980年代までに400社以上の企業を買収し、各種食品のほか、衣類、家庭用品、旅行用品(旅行鞄(かばん)のサムソナイトなど)まで手がける大手消費財メーカーに成長した。しかし1984年のエスマーク買収後の経営悪化で、企業買収専門の投資グループKKRによる買収攻勢に屈した。その後、非食品事業はアメリカン・ブランズ(現フォーチュン・ブランズ)などの企業に分割売却され、食品部門の主力は1990年にコナグラ(現コナグラ・フーズ)に売却された。
[田口定雄]