ベッツィヒ(英語表記)Betzig, Eric

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベッツィヒ」の意味・わかりやすい解説

ベッツィヒ
Betzig, Eric

[生]1960.1.13. ミシガン,アナーバー
アメリカ合衆国の物理学者。1983年カリフォルニア工科大学で学士号,1988年コーネル大学で博士号を取得。AT&Tベル研究所の技術スタッフ(1988~94)などを経て,2005年ハワード・ヒューズ医学研究所のグループリーダーに就任。光の波長の半分より小さいものは見分けられない光学顕微鏡(→顕微鏡),生きたままの細胞を見られない電子顕微鏡限界を破ろうと超高解像度の顕微鏡の開発に着手,ケイ光物質をレーザー光で励起させ,発する光を観察するケイ光顕微鏡原理を利用した。方法として,一つのケイ光物質分子が出した光をとらえて,それを積み重ねて高解像度にしようという 1分子顕微鏡を考えた。2005年,W.E.モーナーが開発した 1分子分光法で 1分子ずつ放出させた光を顕微鏡でとらえ,その像の中心部の位置を精密に測定することを繰り返し,それらを重ね合わせた像をつくれば高解像度が得られることを思いついた。これは光活性化局在顕微鏡 PALMと名づけられた。これまでの光学顕微鏡の限界をはるかにこえて 10nmという超高解像度の像を得られるケイ光顕微鏡の開発により,細胞の微小構造や蛋白質移動などを生きたままで観察できるようになった。2014年,この功績によりモーナー,シュテファン・ヘルとともにノーベル化学賞を受賞した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android