知恵蔵 「ベネッセ」の解説
ベネッセ
株式会社福武書店は、ベネッセホールディンクスの福武總一郎最高顧問の父がおこした会社で、当初は生徒手帳の製作などを業務としていた。70年代前後にスタートした高校・中学の通信教育講座「進研ゼミ」で通信教育の市場を席巻。小学講座や「こどもちゃれんじ」で知られる幼児向け講座などもつくられ、「赤ペン先生」と名付けられた添削指導員による丁寧な採点で好評を博している。95年には「よく生きる」の意の造語を社名とする株式会社ベネッセコーポレーションに改称、2009年から持ち株会社制に移行した。中核事業の「進研ゼミ」は進学熱の高まりやダイレクトメールによる販売促進が奏効し、00年には会員数420万人を数えたが、教育環境の変化や少子化により14年4月には365万人までに落ち込んでいる。こうした中で、14年6月に過去の同社の成功体験にとらわれない指導力を求めるとして、元米国アップル社副社長、日本マクドナルド会長の原田泳幸(永幸)をベネッセホールディングス新社長に迎え入れた。
同年6月末に、ベネッセコーポレーションの顧客情報が大量に流出していることが発覚。同社データベースにあった膨大な量のデータが、同グループの情報処理会社に派遣されていたシステムエンジニアにより、約1年にわたってコピーされ、名簿業者に不正に売り渡されて市中に出回っていた。データは一般の記録媒体にはコピーできない仕組みになっていたとするが、容疑者の供述によればスマートフォン側から接続すれば容易に入手できる状態だったという。原田社長は発覚当初は「社外の者の犯行」「金銭的な補償はしない」などとしていたが、後に顧客への補償費用200億円などを計上した。また、流出したのは現在及び過去の顧客分だけとしていたが、それ以外の情報流出も判明した。今後の情報の拡散を防げる保証はなく、公共団体等との共催行事や冊子の無料配布などで取得した名簿の取り扱いなどを巡って、様々な波紋が広がっている。
(金谷俊秀 ライター / 2014年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報