日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンガルヤマネコ」の意味・わかりやすい解説
ベンガルヤマネコ
べんがるやまねこ
leopard cat
[学] Prionailurus bengalensis
哺乳(ほにゅう)綱食肉目ネコ科の動物。インドからタイ、マレー半島、ボルネオ島、スマトラ島、ジャワ島、フィリピン、中国、台湾、ウスリー地方、朝鮮半島、対馬(つしま)まで分布する。熱帯から寒帯の平地より標高3000メートルまでの森林や低木林に生息する。体長36~83センチメートル、尾長15~44センチメートル。体の大きさや色は生息地によって著しく変化し、フィリピンの亜種パラワンヤマネコP. b. minutusは非常に小形で腹面が純白でなく、斑紋(はんもん)が濃い黒褐色で明瞭(めいりょう)であるが、台湾や中国のタイワンヤマネコP. b. chinensisは中形、短毛で斑紋は梅花状に分裂し、中国東北部や対馬のツシマヤマネコP. b. euptilurusは大形、長毛で体色は淡い黄土色で赤褐色の不鮮明な斑紋がある。
単独で生活しおもに夜行性であるが、人里離れた所では日中も出歩く。地上を歩き回ってネズミ、ノウサギ、ノロの子、キジ、ライチョウ、トカゲなどを捕食するが、木に登ってリスもとらえるという。また、人家付近にも出没してニワトリを襲ったりする。泳ぎも巧みでよく水に入る。一定の面積の縄張り(テリトリー)をもち、樹洞、岩の割れ目、岩の下、茂ったやぶの中などを休息場とする。繁殖期はツシマヤマネコなど北方に分布するものは冬で、このころ1頭の雌に数頭の雄が集まり、雄どうしは激しく戦って雌を奪い合う。南方に分布するものは繁殖期は不定のようで、インド南部では5月に、海南島では3月下旬に、マレーシアでは2~3月と8~9月に子がみられる。東京で飼育されていた朝鮮半島産のものは交尾期は4月と9、10、12月であった。妊娠期間63~69日で、1産2~4子、普通2子である。子は目が閉じているが、体は綿毛に包まれている。目は生後12~17日で開く。寿命は飼育下で13年である。近縁種でインド南部に分布するサビイロネコP. rubiginosusは体長35~48センチメートル、尾長15~25センチメートルと小形である。インドから東南アジアには大形のスナドリネコP. viverrinusが分布する。
[今泉忠明]