日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマネコ」の意味・わかりやすい解説
ヤマネコ
やまねこ / 山猫
wildcat
哺乳(ほにゅう)綱食肉目ネコ科の動物のうち、小形ないし中形の野生ネコ類の俗称で、イエネコとピューマ以外のネコ亜科のものをさす。南極、オーストラリアやニュージーランド、マダガスカル島、西インド諸島などを除く地域の寒帯から熱帯まで広く分布し、スナネコのような砂漠生のものからサーバルのような草原生のもの、マーブルドキャットのような熱帯林の樹上性のもの、マレーヤマネコのような熱帯林の地あ上性のもの、オオヤマネコのように寒帯林にすむものまであり、さまざまな環境に適応している。
体の大きさは変化に富み、体長35~40センチメートル、尾長15~17センチメートルのクロアシネコから、体長85~110センチメートル、尾長12~17センチメートルのオオヤマネコまである。外形、体色、斑紋(はんもん)なども変化に富むが、ヨーロッパ系、東アジア系、南アメリカ系の3グループに大別できる。
(1)ヨーロッパ系ヤマネコ 耳が三角形で先端がとがり、その背面に普通は白斑がなく、体の斑紋が多くは横の方向に走り、リビアヤマネコ、スナネコ、カラカル、オオヤマネコ、ボブキャットなどが含まれる。
(2)東アジア系ヤマネコ 耳が丸くその背面に普通は白斑があり、体の斑紋が多くは縦の方向に走り、ベンガルヤマネコ、スナドリネコ、イリオモテヤマネコなどがある。
(3)南アメリカ系ヤマネコ アジア系に似て尾の黒輪が顕著で、オセロットやマーゲーなどが属する。
食物はネズミ、リス、ウサギ、シカの子などの哺乳類や鳥類がおもで、ほかにトカゲ、ヘビ、カメ、カエル、魚、甲殻類、昆虫などもとらえる。夜行性のものが多く、岩の割れ目、樹洞、岩穴、やぶなどを巣とする。熱帯地方に分布するものの繁殖期は不定で、そのほかの地方のものは普通、春に出産する。妊娠期間は58~78日で、1産1~6子。子の目は閉じており、1~2週で目が開き、10か月から1年で独立し、1~2年で性的に成熟するものが多い。飼育下での寿命は小形のもので7~13年、大形のもので18~21年である。
[今泉忠明]