知恵蔵 「ベーシススワップ」の解説
ベーシススワップ
スワップとは「交換する」という意味の語で、取引の当事者同士がある定まった条件下で同じ価値を持つ資金などを交換することをスワップ取引という。例えば、同じ通貨で元本が等しい債権であっても、それぞれの利子が変動金利か固定金利か、あるいは利率や期間、利息交換日などが異なっていれば、それぞれの経済的影響が異なる。また、ある債務について期間や利率が現在のものとは異なる方が好都合であっても、債務そのものを交換するには相応の法的な手続きが必要となる。ここで、スワップ取引を行い金利支払い部分を交換すれば、事実上は債務を交換したのに等しい経済的効果が得られる。このようなものを金利スワップといい、そのうち変動金利同士を交換することをベーシススワップという。ベーシススワップには、円同士など同種通貨で同じ市場の変動金利であるが、期間、支払い頻度などが異なるものを交換する金利スワップや、円同士でもロンドン(LIBOR)と東京(TIBOR)など市場が異なる金利スワップ、あるいは円とドルなど異なる種類の通貨の変動金利を交換する通貨スワップがある。通貨スワップで一定の期間ドルと円を交換する場合、期間中にわたって元本を交換すると共にドルを受け取った側はドルの金利を支払い、円の金利を受け取る。期間中は投資や支払いなどに交換した通貨を利用し、期間終了後には双方に元本が戻る。
期間中にも金利は変動するが、その基準として一定の指標が用いられる。例えば、ロンドンの銀行間取引ではライボー(LIBOR)と呼ばれる利率があり、日本では同様に全国銀行協会がTIBORを定めている。ベーシススワップでは、これらの指標を基準として算定される変動金利を交換する。ただし、金融市場での金利交換は指標だけでなく、需要と供給の関係で変化する。ドルの需要が多ければドルの金利だけでなく、これに上乗せを加えて交換することになる。金利の単位をベーシスポイント(bp、基準となる点の意)といい、その最小単位は1bp(0.01%)である。金利スワップにおける上乗せ分をベーシススワップスプレッドと呼び、これを加味した市場で決まるレートによって実際の交換が行われている。
(金谷俊秀 ライター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報