ホイスラー合金(読み)ホイスラーゴウキン

化学辞典 第2版 「ホイスラー合金」の解説

ホイスラー合金
ホイスラーゴウキン
Heusler's alloy

1901年,F. Heuslerによって見いだされた強磁性体Cu-Mn-Al合金.もともと単独で強磁性となる物質は鉄,ニッケルおよびコバルトであるが,ホイスラー合金はこのような強磁性金属をまったく含んでいないのが特徴で,その組成は55質量% Cu,30質量% Mn,15質量% Al,またはMn-Cu-Sn合金のことをいう.これに適当な熱処理をほどこすと強磁性になる.適当な組成では,飽和磁化はNiのそれと同程度となるが,MnCu2Al,Mn3Cu6Sn,MnCu2Snの組成に当たるところで最大となる.強磁性の理由はこれら組成の規則格子(super lattice)の生成と3d帯の電子によるものである.その後,強磁性金属を含む規則合金(例:Co2FeSi)もホイスラー合金として分類されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホイスラー合金」の意味・わかりやすい解説

ホイスラー合金
ホイスラーごうきん
Heusler alloy

ドイツの F.ホイスラーが 1903年に発見した銅合金で,だいたい銅 Cu63%,マンガン Mn25%,アルミニウム Al12%付近の組成である。常磁性ないし反磁性金属の合金であるのに,適当な焼入れ,焼戻し熱処理をすると強磁性を示す特徴がある。これは超格子 Cu2MnAl の形成によると考えられ,上記の組成はちょうどこの原子比に相当する。実用磁性合金ではないが,Mn原子の3d殻電子不足を多原子価の Alの価電子が補って磁性が現れると考えられ,理論的興味がもたれている。 Alを他の多原子価元素スズ,アンチモン,ビスマスなどで置き換えてもよい。

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