日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウキボシエソ」の意味・わかりやすい解説
ホウキボシエソ
ほうきぼしえそ / 箒星狗母魚
箒星鮧
箒星鱛
loosejaw dragonfish
[学] Photostomias liemi
硬骨魚綱ワニトカゲギス目ホウキボシエソ科に属する海水魚。北海道と東北地方の太平洋沖、マレーシア、フィリピン、ハワイ諸島などの海域の西部・中部太平洋、インドネシアのジャワ島沖のインド洋の熱帯から温帯海域に分布する。体は細長くて側扁(そくへん)する。体は頭の後端付近でもっとも高く、体高は体長の8.1~11.4%で、臀(しり)びれ起部に向かってやや低くなり、さらにその後方も、尾柄(びへい)まで急激に低くなる。尾柄高は体長の1.6~2.1%。体の腹中線に沿って皮膚が隆起している。吻端(ふんたん)は鈍く、吻長は眼径よりやや短い。目は大きく、体長の3.2~5.7%。口もきわめて大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁をはるかに越えて、鰓蓋(さいがい)の下端近くに達する。下顎の腹面(口床)には皮も肉もなく骨がむき出しになっており、下顎の前部の骨と舌の基部付近(基舌骨)が肉質の紐(ひも)でつながる。前上顎骨と下顎の歯は倒すことができない固定歯で、後背方へ湾曲する。前上顎骨には7~12本のさまざまな大きさの歯があり、第2歯はもっとも長く、先端に返し(逆向きに曲がった突起)がある。主上顎骨には18~33本ほどの小さい歯があり、後方のものほど大きい。下顎にも13~29本のさまざまな大きさの歯があり、前端の1対(つい)は細長く、返しがあり、著しく大きい。鋤骨(じょこつ)(頭蓋床の最前端にある骨)には歯がないが、口蓋骨には4~8本の歯がある。鰓耙(さいは)は5~11個あり、単一棘(きょく)または塊状。目の後縁後方に長三角形状の眼後発光器(最大長は雄では上顎長の21.2~25.3%、雌では11.4~15.5%)がある。雄には目の前縁下方にも小さい眼前発光器がある。鱗(うろこ)はなく、皮膚はきわめてはがれやすい。体の側面に連続するきわめて小さい発光器がある。腹びれより前にある腹側前発光器は21~23個、腹びれ起部から臀びれ起部にある腹部腹側発光器は21~24個、臀びれ起部から尾びれ基底(付け根の部分)にある尾部発光器は12~14個、腹側の発光器の上方に並ぶ体側発光器は33~40個。背びれと臀びれは体の後端に位置し、両ひれはほとんど同じ垂線上から始まる。両ひれの基底の3分の1以上は皮膚で覆われる。背びれは22~26軟条、臀びれは26~29軟条。脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)と胸びれはない。腹びれは6軟条からなり、体の中央より前方に位置し、きわめて長く伸長し、臀びれの起部を越える。その長さは体長のおよそ40%。第1軟条は扁平で、ほかの軟条から分離している。体と各ひれは一様に真黒色。最大体長は15センチメートほどになる。水深約200~3000メートルの中深層~漸深層にすむ。
本種は長い間、大西洋産のP. guerneiと同種にされていたが、2009年に魚類研究者のケナリーChristopher P. Kenaleyが太平洋産を新種として記載した。本種はホタルビホウキボシエソP. tantilluxに似るが、ホタルビホウキボシエソは眼後発光器が雌雄ともに小さく、最大長は雄では上顎長の20.0%以下(本種では21.2%以上)、雌では10.8%以下(同11.4%以上)であることで区別できる。ホウキボシエソ科をワニトカゲギス科の亜科とする研究者もいる。
[尼岡邦夫 2026年2月13日]

