日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウ・シャオシェン」の意味・わかりやすい解説
ホウ・シャオシェン
ほうしゃおしぇん / 侯孝賢
(1947― )
台湾の映画監督。4月8日、広東(カントン)省梅(ばい/メイ)県の生まれ。翌年、一家で台湾へ移住。1972年に国立芸術専科学院を卒業して映画界入りし、多くの作品の助監督や脚本を担当。1980年『ステキな彼女』で監督デビュー。新鋭監督3人によるオムニバス映画『坊やの人形』(1983)で注目され、楊徳昌(エドワード・ヤン)、呉念眞(ウーニェンチェン)(1952― )、朱文(ジュウウェン)(1963― )らとともに台湾ニューシネマの旗手と目される。『風櫃(フンクイ)の少年』(1983)、『冬冬(トントン)の夏休み』(1984)、『童年往事 時の流れ』(1985)、『恋恋風塵(れんれんふうじん)』(1987)などのノスタルジックな傑作群を次々と発表したのち、『悲情城市』(1989)で1947年の「二・二八事件」(国民党による台湾人虐殺事件)に翻弄(ほんろう)される船問屋の一族の悲劇を描き、ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。世界的な名声を獲得した。その後は引き続き激動の台湾史を読み直す『戯夢人生(ぎむじんせい)』(1993)、『好男好女』(1995)のほか、現代の若者を描いた『憂鬱(ゆううつ)な楽園』(1996)、『ミレニアム・マンボ』(2001)、尊敬する小津安二郎の生誕100年記念映画『珈琲時光(コーヒーじこう)』(2003)、フランスを舞台にした『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』(2007)などを発表している。2012年に初の武侠(ぶきょう)アクション映画『聶隱娘(じょういんじょう)』がクランク・イン。完成が待たれる。
[石坂健治]
資料 監督作品一覧
ステキな彼女〈就是溜溜的她〉(1980)
風が踊る〈風兒踢踏〉(1981)
川の流れに草は青々〈在那河畔青草青〉(1982)
坊やの人形〈児子的大玩偶〉(1983)
風櫃の少年〈風櫃來的人〉(1983)
冬冬の夏休み〈冬冬的假期〉(1984)
童年往事 時の流れ〈童年往事〉(1985)
恋恋風塵〈戀戀風塵〉(1987)
ナイルの娘〈尼羅河女児〉(1987)
悲情城市〈悲情城市〉(1989)
戯夢人生〈戯夢人生〉(1993)
好男好女〈好男好女〉(1995)
憂鬱な楽園〈南國再見、南國〉(1996)
フラワーズ・オブ・シャンハイ〈海上花〉(1998)
ミレニアム・マンボ〈千禧曼波〉(2001)
珈琲時光〈珈琲時光〉(2003)
百年恋歌〈最好的時光〉(2005)
それぞれのシネマ~「電姫戯院」 Chacun son cinema - The Electric Princess House(2007)
ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン〈紅氣球之旅〉(2007)
『前野みち子編『侯孝賢の詩学と時間のプリズム』(2012・あるむ)』▽『松竹映像渉外室編『電影透視鏡――アジアから来た人 侯孝賢の世界』(1995・河出書房新社)』