ホスファゲン(その他表記)phosphagen

デジタル大辞泉 「ホスファゲン」の意味・読み・例文・類語

ホスファゲン(phosphagen)

生体内、特に筋肉にあってエネルギー供給貯蔵する高エネルギー燐酸りんさん化合物総称クレアチン燐酸アルギニン燐酸など。燐酸源フォスファーゲン

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改訂新版 世界大百科事典 「ホスファゲン」の意味・わかりやすい解説

ホスファゲン
phosphagen

リン酸源の意味で,生体内におけるエネルギーの貯蔵のためにつくられる高エネルギーリン酸化合物の総称。脊椎動物の筋肉や神経組織に存在するホスホクレアチンphosphocreatineや無脊椎動物に存在するホスホアルギニンphosphoarginineが代表的なものであるが,そのほかにもホスホグアニジノ酢酸やN′-ホスホグアニジノエチルメチルリン酸なども存在する。

これらはすべてグアニジンリン酸の形で高エネルギーリン酸結合をもっている。生体内のエネルギー供給源としては,もちろんATPが最もよく知られており,また各種生体内で広く活用されているが,ATPだけでは量的にも不十分であり,例えば脊椎動物の骨格筋ではホスホクレアチンがATPの5倍も存在し,筋収縮時にはクレアチンキナーゼの働きでATPの供給に,また弛緩時にはクレアチンとATPから再合成される。
高エネルギー結合
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホスファゲン」の意味・わかりやすい解説

ホスファゲン
phosphagen

筋肉が収縮した際に多量に消費されるアデノシン三リン酸 ATPの再補充のため, の形をとって筋肉中に備蓄されている高エネルギーリン酸化合物の総称。いずれもグアニジンリン酸誘導体の形をもつ物質 の反応で ATP を補い,また ATPと X から合成もされる。脊椎動物でのホスファゲンはクレアチンリン酸である。無脊椎動物では,一部にクレアチンリン酸もあるが,アルギニンリン酸が代表的で,そのほかグリコシアミンリン酸,タウロシアミンリン酸など,多くの種類があり,特に環形動物で,それらの分布代謝について研究が進んでいる。イギリスの E.ボールドウィンは 1940年代に,脊椎動物にはクレアチンリン酸,無脊椎動物にはアルギニンリン酸が存在し,脊椎動物の遠い源と考えられる棘皮動物には両者が共存すると指摘した。無脊椎動物については,その後知識は大いに改訂されたが,進化への関心をもってするホスファゲン研究という今日の流れは,ボールドウィンに始る。

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化学辞典 第2版 「ホスファゲン」の解説

ホスファゲン
ホスファゲン
phosphagen

リン酸源ともいう.生体内で高エネルギーリン酸結合の貯蔵に使われるリン酸化合物の総称.動物に広く分布している.代表的なものとしては,脊椎動物におけるホスホクレアチンと,無脊椎動物におけるホスホアルギニンがあり,エネルギー貯蔵伝達物質として重要な意義をもっている.ホスホアミド結合は酸にきわめて不安定であり,容易に加水分解を受ける.生体内ではATP-グアニジントランスホスホリラーゼの特異的な作用で,可逆的に生成と分解が行われている.

 N-ホスホリルグアニジン + ADP

グアニジン + ATP 

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「ホスファゲン」の意味・わかりやすい解説

ホスファゲン

リン酸源とも。生体内,特に筋肉に含まれるエネルギー貯蔵物質の総称。グアニジン基にリン酸が結合した高エネルギー結合をもち,必要に応じ,ADPにリン酸を転移してATPを生産する。クレアチンリン酸(ホスホクレアチン),アルギニンリン酸(ホスホアルギニン)が代表的で,脊椎動物,ナメクジウオ,クモ,ヒトデでは前者を,昆虫,タコ,イカでは後者を,またウニ,ギボシムシの類では両者をあわせもつ。
→関連項目クレアチンリン(燐)酸

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