アルギニン燐酸(読み)アルギニンリンサン(その他表記)arginine phosphate

関連語 正信

改訂新版 世界大百科事典 「アルギニン燐酸」の意味・わかりやすい解説

アルギニンリン(燐)酸 (アルギニンりんさん)
arginine phosphate



筋肉生化学の大家マイヤーホーフO.MeyerhofとローマンK.Lohmannによって1920年代に甲殻類の筋肉から発見され,その後多くの無脊椎動物の筋肉中に見いだされている物質。脊椎動物におけるクレアチンリン酸と同様に高エネルギーリン酸エステルとして,生体内でエネルギーの貯蔵と運搬の役割を担っている。ホスファゲン一種高エネルギー結合)。扁形動物,節足動物,軟体動物,棘皮(きよくひ)動物,原索動物(ただし頭索類を除く)などにアルギニンリン酸がひろく分布し,ウニの類では個体発生に際して,初期にはアルギニンリン酸が主役を演じ,後期に移るに従ってクレアチンリン酸が登場してくることが知られている。生体内では

 アルギニン+ATP⇄アルギニンリン酸+ADP

の反応によってアルギニンから合成される。系統発生上アルギニンリン酸からクレアチンリン酸への移行がみられることは比較生化学的に興味深い
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「アルギニン燐酸」の解説

アルギニンリン酸
アルギニンリンサン
arginine phosphoric acid

N-phosphonoarginine.C6H15N4O5P(254.19).昆虫などの無脊椎動物の筋肉中に存在する高エネルギーリン酸化合物で,高等動物におけるクレアチンリン酸に対応するものである.融点175~180 ℃.酸性では不安定で簡単に加水分解するので,Ba塩として保存する.アルギニントランスホスホリラーゼの作用により,ATPとアルギニンより生成され,エネルギー貯蔵物質として生体内でのエネルギー代謝に関与する.

アルギニン + ATP アルギニンリン酸 + ADP

[CAS 1189-11-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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