改訂新版 世界大百科事典 「ホスホニウム塩」の意味・わかりやすい解説
ホスホニウム塩 (ホスホニウムえん)
phosphonium salt
アンモニウム塩に対応するリン化合物で,一般式PH4⁺X⁻,RPH3⁺X⁻,R2PH2⁺X⁻,R3PH⁺X⁻,R4P⁺X⁻(Rはアルキルまたはアリール基,Xはハロゲン)で表され,前4者はそれぞれPH3,RPH2,R2PH,R3Pとハロゲン化水素HXとの反応で合成され,R4P⁺X⁻は三級ホスフィンR3Pとハロゲン化アルキルRXとの反応で合成される。R4P⁺I⁻は酸化銀との反応で,強塩基であるR4P⁺OH⁻を生成する。ホスホニウム塩は一般に吸湿性が高い。PH4⁺X⁻はアンモニウム塩に比べ不安定で,水により成分に分解する。PH4⁺I⁻が最も安定である。モノ,ジ,トリアルキルホスホニウム塩は,加熱によりホスフィンRPH2,R2PH,R3Pとハロゲン化水素に分解する。R4P⁺X⁻とくに[(C6H5)3PCH2R]⁺型のホスホニウム塩はブチルリチウムなどの強塩基との反応でイリド(C6H5)3P⁺-C⁻HRを生成し,これはカルボニル化合物R1R2C=Oと反応してRCH=CR1R2型のオレフィンを生成するので(ウィティヒ反応),有機合成化学上重要である。
執筆者:岡崎 廉治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報