改訂新版 世界大百科事典 「ハロゲン化水素」の意味・わかりやすい解説
ハロゲン化水素 (ハロゲンかすいそ)
hydrogen halogenide
hydrogen halide
フッ化水素HF,塩化水素HCl,臭化水素HBr,ヨウ化水素HIおよびアスタチン化水素HAtの総称。ハロゲン原子と水素原子との結合はフッ化水素を除いてはイオン性よりもむしろ共有結合性で,結合のイオン性の程度はつぎのようである。HF(60%程度),HCl(17%),HBr(11%),HI(5%)。結合エネルギーはH-F結合が617kJ/mol,H-Clが430kJ/mol,H-Brが365kJ/mol,H-Iが299kJ/molで,HF>HCl>HBr>HIの順である。これらの化合物を水に溶かすと,H⁺が水分子の酸素原子とかなり強固な共有結合性をもつ結合を生じオキソニウムイオンH3O⁺を生成して解離するために,フッ化水素を除いていずれも水溶液中で強酸性を示す。これらの水溶液はそれぞれフッ化水素酸,塩酸,臭化水素酸,ヨウ化水素酸と呼ばれる。フッ化水素を除く三つはH⁺とH2O分子との結合にもとづく水の水平化効果leveling effectのため,事実上水溶液中で完全に解離する。したがって同じ濃度の場合には同程度の酸としての強さを示すが,これらの酸のなかではH-I結合が最も弱いこと,ならびに電解質の平均活量係数はHI溶液が最も大きい値をとることから,ヨウ化水素酸が最も強い酸とみなされており,酸としての強さはHI>HBr>HCl>HFである。フッ化水素酸は水溶液中で重合しHF2⁻イオンを生成する。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報