改訂新版 世界大百科事典 「ホルネル症候群」の意味・わかりやすい解説
ホルネル症候群 (ホルネルしょうこうぐん)
Horner's syndrome
顔面を支配する交感神経系の障害により生じ,瞳孔縮小,眼瞼裂狭小,眼球陥凹を主徴とする症候群。そのほか患側の顔面の発汗障害などがみられることもある。1852年C.ベルナールによって動物で発見され,69年スイスの眼科医ホルナーJohann F.Horner(1831-86)によってヒトにおける臨床所見の発表が行われた。顔面を支配する交感神経は,中枢である視床下部から出て脳幹,脊髄を下降し,第八頸髄から第二胸髄に存在する脊髄毛様中枢に達する。そこで繊維をかえて脊髄を出て上頸部交感神経節に至り,さらに繊維をかえて内頸動脈に沿って頭蓋内に入り末梢器官に分布する。この経路のどこかが障害されると,この症候群を発症する。たとえば脳幹から上部脊髄にかけての血管障害,腫瘍,空洞症など,上胸部から頸部へかけての外傷や腫瘍,頭蓋底部のさまざまな疾患などが原因となる。
執筆者:楠 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報