日本大百科全書(ニッポニカ) 「モスクワ大学」の意味・わかりやすい解説
モスクワ大学
もすくわだいがく
Московский Государственный Университет имени М.В.Ломоносова/Moskovskiy Gosudarstvennïy Universitet imeni M. V. Lomonosova
1755年創設の、ロシア連邦でもっとも古く権威のある大学。ロシアの科学者でありこの大学の設立を計画したロモノーソフの名を冠し、正式名称はロモノーソフ記念モスクワ国立大学。設立当初は小規模であったが、1804年の大学法で4学部制(人文、物理・数学、医学、倫理・政治学)となった。出身階層にとらわれない教育、研究の伝統を有し、19世紀を通じてツァーリズムとの対立をしばしば経験した。
1917年の十月革命以後は「労働者のための学問」をスローガンに、大学の門戸を大きく開放した。創設以来、ソ連時代を代表する科学者、文学者、革命の指導者を輩出し、N・P・オガリョフ、A・I・ゲルツェン、A・P・チェーホフ、I・A・ゴンチャロフなどは革命前にここで学んでいる。教授陣には物理学のP・N・レーベデフ、化学のゼリンスキーНиколай Дмитриевич Зелинский/Nikolay Dmitrievich Zelinskiy(1861―1953)、流体力学のN・E・ジュコフスキー、生化学のA・I・オパーリン、数学のP・S・アレクサンドロフなどが名を連ねていた。第二次世界大戦後、1953年モスクワ南西のレーニン丘(現雀が丘)に完成した32階建ての高層建築は大学の象徴となっており、自然科学系学部が収容されている。
1995年現在17学部(物理、コンピュータ数学・サイバネティックス、化学、数学・力学、生物学、基礎医学、土壌学、地理学、地質学、歴史学、言語学、法律学、哲学、経済学、ジャーナリズム、心理学、社会学)のほかに、夜間部、通信教育部、留学生教育部、高等教育教員研修部、東洋語研究所などがあり、教員数約8000人、学生数約2万8000人。自然科学系の付属研究所(天文学、核物理学、機械工学、人類学)や博物館(動物学、土壌学、人類学)も充実している。
[馬越 徹]