日本大百科全書(ニッポニカ) 「まな板」の意味・わかりやすい解説
まな板
まないた
食物を切り裂くときに台とする、おもに木製の板。俎とも書く。元来、魚類(真魚(まな))を調理する板という意であり、同じ意の「俎」の字があてられ、俎、俎板、魚板などと記された。初めは脚がつけられていたようであり、室町時代末の『七十一番職人歌合(しちじゅういちばんしょくにんうたあわせ)』には、四つの独立した脚をもつまな板にのせられた魚を調理する料理人が描かれている。また、板面の四隅に上下に突出した脚をもち、両面をそれぞれ魚用と菜用に使い分けるものもあった。そして、室町時代に料理の流派が成立すると、まな板は、流派の別を表す格好の用具となり、たとえば、四条流では長さ2尺7寸5分(約83センチメートル)、大草流では3尺3寸5分(約102センチメートル)など、さまざまなサイズが伝えられた。材質はヒノキ、ホオノキ、カツラなどの厚板が使われることが多い。
[森谷尅久・伊東宗裕]
調理に実際に使用するまな板は、古くは、魚用をまな板、野菜用を蔬菜(そな)板と名づけ使い分けされていたが、のちに両者ともまな板とよぶようになった。材質は、木では、食品の成分がしみ込み、それが細菌繁殖の温床となりやすいため、営業用にはプラスチックまな板使用を義務づけている所が多い。合成ゴムのまな板もある。日本では板の形で使用するが、中国では丸太の輪切りの形のものが使用される。また、細かいものや、チーズなどを卓上で切るため、装飾のある陶板をはめ込んだものなども使われる。木のまな板は、使用前に十分水を吸収させて、食品成分が板にしみ込まないようにするとともに、使用後はよく洗浄し、風通しのよいところで乾燥しておくことが衛生的に必要である。
[河野友美・大滝 緑]