主要合金元素としてマンガンを添加した鋼。鋼にマンガンを添加すると焼入れ性が向上する。0.3~0.5%の炭素を含む鋼に1%のマンガンを添加したものが機械構造用マンガン鋼で、車軸などの製造に用いられる。0.2%炭素鋼に1.5%以下のマンガンを添加した鋼板は高張力鋼の一種で、溶接により大形建造物の製造に用いられる。鉄は910℃以上でオーステナイトとよばれる相に原子配列が変わる(変態)が、マンガンを添加すると変態温度が低下する。これを利用して、炭素1%、マンガン約12%を含む高マンガン鋼が耐摩耗性強靭(きょうじん)鋼として、削岩機、レールの交差部分(レールクロシング)、無限軌道(カタピラー)などに用いられ、開発当時の商品名「ハドフィールドHadfield鋼」が現在も用いられている。この鋼は、高温から徐冷すると結晶粒界に炭化物が析出して甚だもろくなる。これを防ぐために高温から急冷する処理(水靭処理)が施される。この鋼は、変形すると著しく硬化するので、圧延が困難であり、一般に鋳物として用いられる。加工性を改善するためにマンガンを増し、炭素を減らしたものが非磁性鋼として用いられる。
[須藤 一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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