改訂新版 世界大百科事典 「マンドラン」の意味・わかりやすい解説
マンドラン
Louis Mandrin
生没年:1724-55
フランスの義賊。ドーフィネ地方の町サンテティエンヌ・ド・サン・ジョアールの生れ。父親は馬を扱う商人として産をなした。マンドランも父の仕事を受け継ぎ,オーストリア継承戦争(1740-48)の間には,イタリア戦線にあったフランス軍に軍馬,糧秣を納入したが,徴税請負人の奸計に陥って支払いを受けられず,家産のほとんどを失った。これをきっかけに,マンドランは,徴税請負人に対する反感をつのらせ,彼らの独占物であったタバコや塩などの密輸を業とする山賊へと転身する。当時は独立王国であったサボアやスイスに接していたドーフィネ地方では,古くから国王役人の目をかすめての密輸が絶えなかったが,マンドランは1753年ころより,50~60人もが武装して徒党を組む大密輸団の仲間に加わって頭角を現し,54年には独立して200~300人もの手下を抱える大山賊団の頭領となった。こうして彼は,札付きのお尋ね者となるが,密輸したタバコや捺染キャラコ,その他外国商品を安値で売りさばいて民衆の支持を集め,その行動範囲は遠くブルゴーニュからオーベルニュにまで及んだ。徴税請負事務所を打ち壊し,ときには1500人もの国王軍と対等に戦うなど,一時は敵する者のないありさまであったが,55年内部の裏切りで逮捕され,南フランスのバランスで極刑に処せられた。彼の行動は,徴税役人に反感を抱く庶民の喝采を博し,民衆向けの青表紙本などにも取り上げられ,義賊の典型とみなされた。
執筆者:二宮 宏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報