マンネングサ(読み)まんねんぐさ

改訂新版 世界大百科事典 「マンネングサ」の意味・わかりやすい解説

マンネングサ (万年草)
stonecrop

ベンケイソウ科マンネングサ(キリンソウ)属Sedumセダム)のうち,マンネングサ亜属の総称。マンネングサ亜属は北半球や東アフリカの高山に約200種あり,日本には北海道を除き21種が見られる。多年生多肉植物で,普通は根茎がなく,葉に鋸歯を欠き,多数分枝し,地面をはう。日本産の種類は葉序で大別できる。葉が3輪生するものには,葉が線形のオノマンネングサS.lineare Thunb.,葉が菱形で地面を50cmもはうツルマンネングサS.sarmentosum Bungeがある。なお近年,都市などに帰化したメキシコマンネングサS.mexicanum Britt.は4輪生である。葉が対生する種にはマルバマンネングサS.makinoi Maxim.がある。葉が互生の種群には,高山や亜高山に生え,小型で,茎葉が赤紫色に染まり,葉は線状円柱形で,葉幅2mm以下のミヤママンネングサS.senanense Makino(染色体数2n=18),海岸岩上に生え,葉は卵形で長さ7mm以下,葉幅2~3.5mmのタイトゴメS.oryzifolium Makino(染色体数2n=20),平地の人家近くの岩場や石垣に生え,冬季には茎葉が赤くなり,葉が線状円柱形で長さ6~18mm,幅2~3.3mmのメノマンネングサS.japonicum Sieb.(染色体数2n=29,38,48),渓流の岩上に生え,葉がさじ形のヒメレンゲS.subtile Miq.,越冬一年草で,道路やあぜ道などに見られ,葉腋(ようえき)に不定芽をつくり繁殖するコモチマンネングサS.bulbiferum Makinoなどがある。これらは日本産の代表種である。日本の種はいずれも黄花だが,ヨーロッパのシロバナマンネングサS.album L.は白花で,ヨーロッパと北アフリカに分布するヒメホシビジンS.dasy phyllum L.は葉が対生し,青白色で短毛があり,花は白い。

 マンネングサの類はカーペット状に育つので,地被植物カバープラント)に使えるが,踏みつけるとつぶれるため,通路には敷石を配置する。乾燥に強く,ロックガーデンに向く。鉢植えの場合は底の浅い鉢を使う。植えっ放しでは鉢からはみ出し,中心部が枯れてくるので,毎春植えかえるか,挿木で更新する。高温多湿には弱い。ツルマンネングサは韓国では野菜として食用にされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンネングサ」の意味・わかりやすい解説

マンネングサ
まんねんぐさ / 万年草

広義にはベンケイソウ科(APG分類:ベンケイソウ科)マンネングサ属Sedum植物の総称。約400種あり、オーストラリア、太平洋諸島を除く全世界に分布する。日本には17種が自生し、数種が帰化している。多年草が多いが一年草もある。葉は単葉で托葉(たくよう)がない。花は小形で普通は5数性である。日本には花弁が黄色のものがほとんどであるが、白、紅などの種もある。前記のようにマンネングサの名は広義にはマンネングサ属植物の総称であるが、一般には茎、葉ともに多少とも肉質で、茎が地面や岩上をはい、多数の葉を生じる形の種をさす場合が多い。日本産の種では、オノマンネングサ、メノマンネングサ、ツルマンネングサ、コモチマンネングサ、マルバマンネングサ、タイトゴメなどがある。

 狭義にオノマンネングサS. lineare Thunb.の異名とされる。メノマンネングサS. japonicum Sieb. ex Miq.はこれと対(つい)をなす名であるが、系統的に両者がごく近縁ということではない。メノマンネングサは茎はよく分枝し、多数の線状の葉をつける。全体に赤みを帯びることが多い。5~6月、茎頂に花序を出し黄色の花を多数つける。裂開前の葯(やく)は濃黄色または橙(だいだい)色で、よく目だつ。本州、四国、九州に分布し、海岸(とくに日本海側)から低山地の岩上、石垣、屋根上などに群生して生える。本州の亜高山、高山帯には変種のミヤママンネングサvar. senanense (Makino) Makinoが分布する。

[大場秀章 2020年3月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マンネングサ」の意味・わかりやすい解説

マンネングサ(万年草)
マンネングサ
Sedum lineare

ベンケイソウ科の多年草。オノマンネングサ (雄の万年草) ともいう。本州,四国,九州から沖縄,中国大陸南部にかけて広く分布する。山地の岩上に生え,観賞用に栽培されることもある。全体に多肉性で,茎は地をはい,葉は長さ 2cmほどの線形で先は次第に細くなり,鈍頭である。高さ 10~20cmの花茎を直立し,葉は3枚輪生する。5~6月,枝の先が分枝し,黄色の花をつける。萼,花弁とも5枚で,おしべは 10本あり,5本ずつ内外二重に輪生する。近縁のよく似た種類として葉が互生するメノマンネングサ (雌の万年草),沖縄などに生え枝先に1個ずつ花のつくコゴメマンネングサ S. uniflorumなどがあり,最近は外国産のメキシコマンネングサ S. mexicanumが都会地を中心に広がっている。

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百科事典マイペディア 「マンネングサ」の意味・わかりやすい解説

マンネングサ

オノマンネングサとも。ベンケイソウ科の多年草で,本州〜九州,中国の低山地にはえ,また観賞用に庭にも植えられる。高さ10〜20cm,基部から横走する無花枝を出して繁殖。葉は線形,緑色で,3枚ずつ輪生し,長さ2〜2.5cm。晩春,茎の先にまばらに多数の黄色5弁花を開く。花弁も萼片(がくへん)も5枚。ふつう結実しない。全草多肉でなかなか枯死しないのでこの名がある。近縁のメノマンネングサは前種よりも小さく,葉は互生し,円柱形で短い。コモチマンネングサは平地の林内にはえ,無花枝は出さないが,葉腋にむかごをつけて繁殖する。
→関連項目タイトゴメ

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世界大百科事典(旧版)内のマンネングサの言及

【セダム】より

…ロックガーデン,花壇,鉢植えなどに広く用いられる。英名はstonecrop,orpine,live‐forever。普通,花弁と心皮は5数性,おしべは10本。…

【ベンケイソウ】より

…多肉葉を発達させるが,托葉を欠き,花弁と心皮の間に小さな鱗片(みつ腺)がある。セダム亜科は北半球に広く分布し,花はおもに5数性で,離弁,おしべは10本,代表属はマンネングサ(セダム)属Sedumや,ロゼット葉が顕著なイワレンゲ属Orostachys。クラッスラ亜科は南アフリカに集中し,アズマツメクサ属Tillaeaのみが,北半球やオーストラリアに分布する。…

※「マンネングサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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