改訂新版 世界大百科事典 「マーティノー」の意味・わかりやすい解説
マーティノー
Harriet Martineau
生没年:1802-76
イギリスの女性著述家。ノリッジの織物製造業者の娘。幼少から病弱で耳が不自由であったが,父親の破産と死去によって自活を余儀なくされる。その著作活動は多方面にわたるが,とくに有名なものは,〈実用知識普及協会〉のために執筆した《経済学例解》(1832-34)と《税制例解》(1834)である。物語という形式と経済学の原理を融合させたもので,たとえば機械打ちこわし(ラッダイト運動)や救貧法問題を例証に用いている。また,北アメリカやエジプト,パレスティナなどを旅行し,旅行記を著したり,小説や少年向けの短編物語,コントの《実証哲学》の翻訳(1853)などがある。概してその見解は急進主義的で,改革者,フェミニストとしての情熱をも有していた。
執筆者:河村 貞枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報