マーワルディー(読み)まーわるでぃー(英語表記)al-Māwardī

デジタル大辞泉 「マーワルディー」の意味・読み・例文・類語

マーワルディー(al-Māwardī)

[974~1058]イスラムシャーフィイー派の法学者・政治理論家。その著「統治論」によって古典的カリフ論を確立した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーワルディー」の意味・わかりやすい解説

マーワルディー
まーわるでぃー
al-Māwardī
(974―1058)

イスラムの法学者。イランのマーワルドに生まれる。スンニー派の法学者で、シャーフィイー学派に属する。アッバース朝カリフの支配力が弱まり、各地の太守が実質上の政治的支配者として台頭してくる時代に、バグダードの大法官として活躍した。イスラム共同体の統一の回復と社会正義の実現を目ざして特色のある政治論を展開した。在世中には著作を発表しなかったといわれているが、その主著『支配の原理』において、選挙によるカリフ制やカリフの社会に対する責任制、独裁に対する法治主義制度の確立の必要性などが説かれている。彼の政治思想は現代イスラム世界にも強い影響力を及ぼしている。

[松本耿郎 2018年4月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「マーワルディー」の意味・わかりやすい解説

マーワルディー
al-Māwardī
生没年:974-1058

シャーフィイー派の法学者,政治思想家。ペルシアのマーワルド出身。各地のカーディー(裁判官)を務めた後,バグダードに住み,アッバース朝カリフ,ザーヒル仕えた。その主著《統治の諸規則al-Aḥkām al-sulṭānīya》により政治思想史上高く評価される。とくにそのカリフ論は,現実のカリフの実態とはかけ離れた議論ではあるが,スンナ派の立場をよく表す理論であると同時に,アッバース朝臣下としての彼自身のカリフの復権を願う気持も込められている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マーワルディー」の意味・わかりやすい解説

マーワルディー
al-Māwardī, Abū al-Ḥasan `Ali ibn Muḥammad

[生]974
[没]1058. バグダード
イスラムの四大法学派の一つシャーフィイー派の法学者。イラクバスラおよびバグダードで学び,一時はニシャプール付近のウストワーで裁判官をつとめた。その後アッバース朝のカリフであるカーディル (在位 991~1031) に仕え,『統治の諸原則』 Kitāb al-aḥkām al-sulṭānīyahを著わして,衰退期のアッバース朝国家でカリフ制度を立直すための政治理論を展開した。

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世界大百科事典(旧版)内のマーワルディーの言及

【アミール】より

…また彼らが征服した土地でそのまま総督となった場合にも,ひきつづきアミールと呼ばれ,カリフに代わってその地を統治した。このような,総督としてのアミールの任務として,10~11世紀の法学者マーワルディーは,(1)軍隊の整備とその給与の支給,(2)カーディー(裁判官)の任命,(3)ハラージュ,サダカ両税の徴収,(4)イスラムの擁護,(5)刑罰を科すること,(6)金曜日の集団礼拝の指導,(7)メッカ巡礼者の保護,(8)ジハード(聖戦)の遂行の8項目をあげている。このうち(7)の任務は,独立して特別にアミール・ハッジュ(巡礼のアミール)と称されることがある。…

【イスラム】より

…このような現実の変化に対応して,ウラマーも国家の事実上の支配者である君主の存在を容認せざるを得なかった。たとえばマーワルディーは,支配者がシャリーアに従って政治を行うならば,カリフは王権に合法性を与えるべきであるとし,またガザーリーは,共同体の秩序維持にあたるスルタンを,カリフは無条件で承認すべきであると主張した。のちには妥協と追認のカリフ論を批判するイブン・タイミーヤのような思想家も現れたが,大方のウラマーは現実に対して次々と譲歩を重ね,ついにはイブン・ジャマーアのように暴君の容認にまでいたったのである。…

※「マーワルディー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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