ミクリッツ病(読み)みくりっつびょう(英語表記)Mikulicz' disease

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミクリッツ病」の意味・わかりやすい解説

ミクリッツ病
みくりっつびょう
Mikulicz' disease

両側涙腺(るいせん)や唾液(だえき)腺(耳下(じか)腺、顎下(がくか)腺)にリンパ球が浸潤して痛みを伴わない持続性の腫脹(しゅちょう)がみられる、良性慢性に経過する疾患免疫グロブリンGIgG)の関与が疑われる自己免疫疾患と考えられているが、原因は明らかになっていない。ドライマウスドライアイなどシェーグレン症候群に似た症状も呈するが、その程度は軽度である。長年にわたってシェーグレン症候群の一型とされてきたが、独自の免疫性疾患とも考えられている。自己免疫性膵(すい)炎、自己免疫性下垂体炎、間質性腎(じん)炎などをしばしば合併し、男女差は認められない。悪性リンパ腫など明らかな基礎疾患をもつものはミクリッツ症候群として扱われる。

 診断法も確立していないが、シェーグレン症候群と違って、副腎皮質ステロイド薬による薬物治療により腺の腫脹が著しく改善されることが特徴である。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミクリッツ病」の意味・わかりやすい解説

ミクリッツ病
ミクリッツびょう
Mikulicz's disease

J.ミクリッツが 1888年に報告した良性の無症候性両側性涙腺・唾液腺肥大症。症状としては,両側の涙腺,唾液腺が対称的に腫張する。そのほかにも涙腺,唾液腺の圧迫による視力障害,聴力障害,口内乾燥,咀嚼障害などがある。現在では病気というより,症候群として考えられるようになり,ミクリッツ症候群と呼ばれるようになってきた。この種の症状を示す疾患は,原因不明のものと,白血病リンパ肉腫結核,梅毒,サルコイドーシスなどに起因するものとに分けられている。したがって,病変が単一の腺に限局しているときには,悪性腫瘍の可能性も考えなければならない。 50~60歳代に多発し,女性に多い。

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