改訂新版 世界大百科事典 「ミシシッピ文化」の意味・わかりやすい解説
ミシシッピ文化 (ミシシッピぶんか)
北アメリカ東部の森林地帯に,ウッドランド文化につづいて発展し,ヨーロッパ人の植民地建設時まで継続していたアメリカ・インディアンの先史文化をいう。メソアメリカからの間接的影響をうけてミシシッピ川中流域でまず発達し,のちに周辺に広まったと考えられている。方形の広場を伴う寺院基壇用のマウンドが特徴的であり,発達した宗教体系をもち,集約的農業や土器製作などの技術の発達で特徴づけられる。寺院基壇用のマウンドは上面が平坦で,その上に寺院,首長の住居,そのほかの重要な建物が建設されたと考えられている。イリノイ州カホキアCahokia遺跡のモンクス・マウンドは高さ30m,基部は200m×300mの規模があり,その周辺には200を超える小規模なマウンドが建設されていた。農業はトウモロコシ,豆,カボチャ,ヒマワリを主要な栽培植物とし,漁労,狩猟,採集とともに生業基盤の中心をなしていた。土器は刻線文,押圧文,彩色文で装飾され,把手や動物・人物像などを付属的に配し,器形も多様性に富んでいた。マウンド,広場などに代表される集落は大規模化し,定着的であった。その社会は首長国家のような,階層化した小国家をなし,マウンドとそれに共伴する各種の副葬品に象徴されるように,メソアメリカからの影響をうけ,南東部に発展した宗教体系に特徴づけられていた。おもな遺跡は,エトワ(ジョージア州),カホキア(イリノイ州),アスタラン(ウィスコンシン州)などである。
執筆者:小谷 凱宣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報