改訂新版 世界大百科事典 「ミズアブ」の意味・わかりやすい解説
ミズアブ (水虻)
双翅目ミズアブ科の昆虫の総称,またはそのうちの1種を指す。ミズアブStratiomyis japonicaの幼虫は,水生で池沼,水田などに生息する。ときには,山地の渓流沿いの水温の高い温泉の中にも生息することが知られ,オンセンアブとも呼ばれている。南西諸島を除く日本全国に分布し,成虫は6~10月に出現する。体長13~20mm,腹部側縁に黄色紋を有する大型のアブである。
ミズアブ科Stratiomyiidae(英名soldier fly)には多くの属を含む。このうち,ミズアブ亜科の幼虫は水生,他は陸生である。陸生のものは,土中,倒木下,朽木中,コケの下,腐敗した果実,動物の糞中などに生息し,腐敗した有機物を食べる。さなぎは,ハエ類と同じく囲蛹(いよう)で,終齢幼虫の外皮中で蛹化する。成虫の多くは,森林内の葉上,花上などで見られる。ハナアブのように雄が空中で滞飛する種もある。農村に多いコウカアブPtecticus tenebriferは,豚舎,鶏舎のほか人糞からも発生する。コウカは漢字で後架で,便所の意である。
執筆者:篠永 哲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報