日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミュンヒハウゼン症候群」の意味・わかりやすい解説
ミュンヒハウゼン症候群
みゅんひはうぜんしょうこうぐん
Münchhausen syndrome
自分に目を向けさせるために虚偽の症状や病状を訴え、治療を求めて病院を渡り歩く精神疾患。アメリカ精神医学会のDSM(『精神障害の診断と統計の手引き』)や世界保健機関(WHO)の国際疾病分類ICD-10(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, 10th edition)では、虚偽性障害に分類されている。「病院放浪者」の別称もある。
病名は『ミュンヒハウゼン物語』(『ほら男爵の冒険』)の主人公にちなんでいるため、詐病(さびょう)(仮病)と間違えられやすいが、実際に病人としてみられ周囲の関心や同情を引くために、下痢や吐血などの身体症状を起こすまで薬物や毒物を服用あるいは注入する、手術痕(こん)を装うために自傷行為を繰り返す、などの点で区別できる。原因は、幼児期の虐待体験、病気や手術の体験、対人関係の問題、パーソナリティー障害などが考えられる。なお、自分の子供など近親者に同様の行為を行って病人に仕立て上げ、周囲の関心を引こうとする場合は、代理ミュンヒハウゼン症候群という。
[編集部]