ミュンヒハウゼン物語(読み)みゅんひはうぜんものがたり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミュンヒハウゼン物語」の意味・わかりやすい解説

ミュンヒハウゼン物語
みゅんひはうぜんものがたり

俗に『ほら男爵冒険』の名でも知られるミュンヒハウゼン男爵のほら物語。18世紀ドイツに実在したミュンヒハウゼン男爵(1720―97)は旅と狩猟を好み、トルコ戦争に二度も従軍するほど冒険心に富んだ人であったが、物語ではこの主人公が旅や狩りの冒険奇譚(きたん)、ほら話を友人仲間に語って聞かせる一人称小説の体裁をとっている。こうした民間伝承の17編の滑稽(こっけい)譚(1781)を『ミュンヒハウゼン物語』として最初に集成し、英訳出版(初版1785)したのは、イギリスに亡命したドイツ人司書ラスペである。ビュルガーがこの英語本の第二版に、さらに13編の物語を加えてドイツ語に翻案し、『ミュンヒハウゼン男爵の水陸にわたる不思議な旅と遠征と愉快な冒険』(1786)を著すに及んで、科学的合理主義の精神では割り切れない世界を機知ユーモアに富んだ手法で描き出したこの作品は、うそ物語のジャンルのなかでもひときわ芸術性の高い民衆本として古典的名著に数えられている。19、20世紀にも『ミュンヒハウゼン物語』の改作模作は後を絶たず、インマーマンの時代風刺小説(1838)、ヘンゼルのドラマ(1933)、ケストナーの映画台本(1943)など、その作品は数多くある。

[新保弼彬]

『江野専次郎・中込忠三訳『ほら男爵の冒険』(角川文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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