改訂新版 世界大百科事典 「ミュンヒハウゼン物語」の意味・わかりやすい解説
ミュンヒハウゼン物語 (ミュンヒハウゼンものがたり)
一般に〈ほらふき男爵〉の異名で知られる,ミュンヒハウゼン男爵の愉快な冒険奇譚。18世紀ドイツに,ミュンヒハウゼンHieronymus Karl Friedrich Freiherr von Münchhausen(1720-97)という,狩猟好きで大話の得意な地方貴族が実在したが,《ミュンヒハウゼン物語》はこの人物をモデルにした一人称の主人公が,狩や旅のほら話,大話,奇想天外な冒険などを,一杯機嫌で友人仲間に語りきかせる体裁をとっている。素材の多くはむしろ民間伝承的なものだが,断片的逸話類を集成しミュンヒハウゼンの名と初めて結びつけて英語版を発表したのは,亡命ドイツ人ラスペRudolf Erich Raspe(1737-94)である(初版1785)。ルキアノスの《ほんとうの話》の抜粋翻案等をつけ加えたその第2版を,ドイツ語に翻訳し独自に筆を加えて,機知と諷刺に富んだほら話の古典的傑作としたのはビュルガーである(《Die Wunderbare Reisen zu Wasser und zu Lande, Feldzüge und lustige Abenteuer des Freiherrn von Münchhausen》初版1786)。その後もインマーマンの長編小説や,ハーゼンクレーバーのドラマ,ケストナーの映画台本など,〈ミュンヒハウゼン〉をテーマとした文学的作品は少なくない。
執筆者:新井 皓士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報