ミュージック・セリエル（読み）みゅーじっくせりえる（その他表記）musique sérielle フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ)

ミュージック・セリエル
みゅーじっくせりえる
musique sérielle フランス語
serial music 英語

ある音列（セリー）を設定し、それを厳密な規則性に基づいて分割、変形して構成された音楽。セリー音楽と訳され、20世紀初頭のシェーンベルクの十二音音楽に始まる。その弟子ベルクは、十二音技法と調性的な響きの総合を目ざしていたのに対し、もう一人の弟子ウェーベルンは、音列の分割、音程の諸関係にきわめて理論的な規則を適用し、第二次世界大戦後の音楽に影響を与えた。アメリカではバビットMilton Babbitt（1916―2011）、日本では入野義朗(よしろう)、柴田南雄(しばたみなお)、諸井誠(もろいまこと)（1930―2013）、ヨーロッパではブーレーズ、シュトックハウゼン、ノーノがまずこの新ウィーン楽派の遺産を継いだ。そしてベルクやウェーベルンがすこし試みたリズムへのセリー技法の応用は、ブーレーズの『構造Ⅰ』（1952）、シュトックハウゼンの『点対点』（1952～1953）においてさらに音色や強弱に拡張される。ここでは、音高、音価、強弱、音色の一つ一つがパラメーターとして、それぞれ順列・組合せ的な構造をもっている。こうした音楽を総セリー音楽、トータル・セリー音楽とよぶが、1950年代後半には、理論があまりに煩雑になったことと、偶然性やトーン・クラスター（音塊技法）の導入により、純粋にセリーのみによってつくられた作品は減少していった。

［細川周平］

[参照項目] | 入野義朗 | ウェーベルン | 音列 | シェーンベルク | 柴田南雄 | 十二音音楽 | シュトックハウゼン | セリー | ノーノ | ブーレーズ | ベルク

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)