日本大百科全書(ニッポニカ) 「セリー」の意味・わかりやすい解説
セリー
せりー
série フランス語
Reihe ドイツ語
音楽用語。十二音音楽または十二音技法による楽曲の基礎形態として設定された12音音列Zwölftonreihe(ドイツ語)、série dodécaphonique(フランス語)をさす。それは、一オクターブを12等分した12種類の音を平等に扱うため、省略、重複することなく配列した音列で、そこではどの一つの音も他の11の音すべてが現れるまでけっしてふたたび用いられることはない。したがって、こうしてつくられる音列は、音の連なる順序を規制し、また楽曲を通して何度も繰り返し現れるため、伝統的な調性音楽における主題に類似した役割を担っている。ただし、各音はどのオクターブのものを用いてもよい。また、同じ音列の繰り返しから生じる単調さを避けるために原音列のさまざまな変形がなされる。変形法には原形をそっくり別の高さに移す移置、音程の上行と下行とを正確に逆に進ませる反行形、原形の配列を逆の順序にする逆行形、後二者を組み合わせた反行逆行形などがある。
なお、十二音音楽が成立した当初、セリーは音高に関してだけ適用されていたが、しだいにその観念が和音やリズム、さらには音色や強弱法にまで広げられ、ミュージック・セリエルへと導かれていった。
[黒坂俊昭]