日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルク」の意味・わかりやすい解説
ベルク
べるく
Alban Berg
(1885―1935)
オーストリアの作曲家。ウィーンの富裕な商人の家庭で、芸術的な環境のなかに育ち、15歳ごろより独学で作曲を試みる。1904年シェーンベルクに出会い、この時期、表現主義的な無調音楽を作曲していた彼に、6年間師事する。同時期の弟子にウェーベルンがいる。08年ピアノ・ソナタ(作品1)を完成。続いて『四つの歌曲』(作品2、1909~10)、弦楽四重奏曲(作品3、1910)を発表。11年結婚、『三つの管弦楽曲』(1914~15)ほか、本格的な創作を開始する。そして25年、第一次世界大戦中に書き始められたG・ビュヒナーの戯曲によるオペラ『ウォツェック』を初演。大きな議論をよぶ。その後、持病の気管支喘息(ぜんそく)にあえぎながら、弦楽四重奏のための『叙情組曲』(1925~26)、未完のオペラ『ルル』(ウェーデキント台本、1979年ツェルハによる補作版初演)などを書く。35年12月24日、敗血症のため死亡。作風は、新ウィーン楽派(シェーンベルク、ウェーベルン)のなかではもっともロマン主義的で叙情に富んでおり、同楽派のウェーベルンと好対照をなしている。ベルクは古典的形式のなかで、無調、十二音技法を用いることに専念した。
[細川周平]
『T・W・アドルノ著、平野嘉彦訳『アルバン・ベルク』(1983・法政大学出版局)』▽『W・ライヒ著、武田明倫訳『アルバン・ベルク』(1980・音楽之友社)』▽『レイボビッツ著、入野義郎訳『シェーンベルクとその楽派』(1965・音楽之友社)』