ミルクイガイ (海松食貝)
Washington clam
horse clam
Tresus keenae
バカガイ科の二枚貝。商品名ミルガイ。殻は卵形で,両殻間は大きく開いている。殻の長さ14cm,高さ9cm,膨らみ5.5cmになる。白色で黄褐色から暗褐色の厚い皮をかぶる。内面は黄白色。殻頂の下のかみ合せには大きい弾帯受けがあり,殻を開く働きをする黒い弾帯がのっている。軟体は後方へ太い水管を出す。出入水管は互いにくっつき,灰褐色の皮でおおわれている。この水管の上にミルが生えていたというのでミルガイまたはミルクイガイの名がある。足は斧形で大きい。北海道から九州の内湾の浅い砂泥底にすむ。浮遊有機物やプランクトンを食べる。産卵期は2~6月。水管は食用として美味で,すし種になる。本草書では西施舌にミルクイガイがあてられているが,ミルクイガイは中国では産出せず,これはアリソガイCoelomactra antiquataのことである。アメリカ西海岸にはアメリカミルクイT.nuttalliを産するが,アメリカナミガイPanopea generosaとともにミルクイガイの代用品として日本へ輸出している。
執筆者:波部 忠重
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ミルクイガイ
みるくいがい / 海松喰貝
gaper
[学] Tresus keenae
軟体動物門二枚貝綱バカガイ科の二枚貝。食用貝で、市場名はミルガイである。北海道から九州に至る内湾の浅い砂泥底にすむ。普通、殻長14センチメートル、殻高9センチメートル、殻径5.5センチメートルに達するが、殻長15センチメートルを超える個体もある。殻は長卵形の厚質で、ややもろい。前後端は開き、とくに後端の開口部が大きい。殻表は白色で、黒褐色の厚い殻皮をかぶる。内面は灰白色。鉸板(こうばん)は殻頂の下に大きな弾帯受けがあり、主歯は1個で∧形、側歯は小さくて短く、右殻に2個、左殻に1個ある。この貝の水管上に海藻のミルが生じ、あたかも後端開口からこれを食べているようにみえるのでこの名がつけられたらしい。肉は食用とされ、とくに水管は大きく太く、甘味があって美味なのですし種にされる。最近、市場で「シロミル(白みる)」と称されているのは別科に属するナミガイPanopea japonicaである。
[奥谷喬司]
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ミルクイガイ
Tresus keenae; Washington clam
軟体動物門二枚貝綱バカガイ科。俗にミルガイともいう。殻長 14cm,殻高 9cm,殻幅 5.5cmに達するが,さらに大型の個体もある。殻は厚いがもろい。殻の前端は丸みがあるが,後端はややまっすぐに切断状となり,両殻の間は卵形に開く。殻表は白いが,黄褐色ないし暗褐色の殻皮をかぶっており,老成するとはげる。内面は白色で,殻頂の下に大きな 鉸歯があり,黒い弾帯が乗っている。軟体は太く長い水管をもち,これを殻の後端の開口から出すが,この上に海藻のミルが生えていたというのでその名がある。北海道から九州,朝鮮半島の内湾の浅い泥底にすむ。水管の革質の皮をはいで肉だけにして,鮨種など食用に供する。
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「ミルクイガイ」の意味・わかりやすい解説
ミルクイガイ
ミルガイとも。バカガイ科の二枚貝。長さ14cm,高さ9cm,幅5.5cmになる。両殻は後端で長卵形に開き,太い水管を出す。殻は白色,その上を厚い黄褐〜暗褐色の殻皮がおおう。内面も白色。北海道の南部〜九州の内湾の浅い砂泥底にすみ,産卵期は2〜6月。水管は黒い皮で包まれるが,むくと白色。この水管の上にミル(海松)が生えていたというのでこの名がある。吸物などにして美味。
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