改訂新版 世界大百科事典 「ムギツク」の意味・わかりやすい解説
ムギツク (麦突)
Pungtungia herzi
コイ目コイ科の淡水魚。モント(兵庫県円山川),ムギー(山口県),ニナスイ(大分県)などとも呼ばれる。日本(琵琶湖・淀川水系以西の本州と九州北部)と朝鮮半島に分布。河川の中流域の石の多いよどみなどにすむ。石の下や岩の裂け目などに潜み,ときどき出て石などの側壁に沿ってゆっくり泳ぎながら餌をあさる。餌は水底や石の間などにすむ昆虫の幼虫などの小動物。水中で発音する習性のあることが知られている。産卵期は5~6月で,雌雄1対で産卵行動を行う。卵は石の下面や石垣のすき間などに1層に産み着ける。体は細長く,頭部は縦扁して細くとがり,唇は側部が著しく肥厚する。口角に太く短い2本のひげがある。吻端(ふんたん)から尾びれの中央後端まで太い黒色縦帯が走り,この縦帯は幼期にはとくに目だつ。成魚の全長10~15cmで雌雄による大きさの差はあまり認められないが,雄は産卵期には頭部や体の背面に微細な追星(おいぼし)が現れる。九州の一部では食用として珍重される。
執筆者:中村 守純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報