改訂新版 世界大百科事典 「ムラサキツバメ」の意味・わかりやすい解説
ムラサキツバメ
Narathura bazalus
鱗翅目シジミチョウ科の昆虫。ムラサキシジミよりも大型で,開張3.8~4.2cm。後翅に小さな尾状突起があるのでこの名がある。ヒマラヤからマレー半島,インドシナ半島,ジャワ,中国南・西部,台湾および日本に分布する。日本では本州の近畿地方以西の暖地に見られ,四国,九州,屋久島,種子島を経て奄美大島,沖縄本島,南西諸島に及ぶ。幼虫の食樹となるブナ科のマテバシイ,シリブカガシなどを含む照葉樹林にすみ,産地はムラサキシジミに比べて局部的である。九州南部では年4回程度の発生を繰り返す。成虫の習性はムラサキシジミとよく似ており,夕方樹上を活発に飛び回り,なわばりをつくる。やはり秋になると花に集まる傾向が見られ,サザンカ,ソバ,ハマボウフウなどの花を好む。成虫は食樹や他の照葉樹の葉上に集団をつくって越冬し,ときに100匹を超える大集団をつくることがある。幼虫は食樹の新芽をつづって巣をつくる。
執筆者:高橋 真弓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報