北アフリカ、モロッコ内陸部の都市。メクネス県の県都。人口53万0171(1994)、市域の人口68万5408(2014推計)。首都ラバトの東120キロメートル、中アトラス山脈北麓(ほくろく)の標高500メートルの高原上にあり、地中海岸と大西洋岸、サハラと海岸平野とを結ぶ交通の十字路に位置する。肥沃(ひよく)な農業地域における産物の集散地で、食品、繊維、セメントなどの近代工業と、皮革品、じゅうたん製造などの伝統工業がある。11世紀、ムラービト王朝時代に城郭都市として建設されたが、ムワッヒド王朝以後はマリーン王朝時代を除き、重視されることのない地方都市であった。1670年代に、アラウィ朝のスルタンのムライ・イスマーイールが首都とし、豪壮な王宮を建てモロッコのベルサイユとよばれた。1728年以降首都がフェズなどに移って衰退したが、フランス植民地時代にはその戦略的位置から軍事基地が置かれた。メディナとよばれる旧市街に、華麗なマンスール門、イスマーイール王宮跡、現王宮、モスク、神学校などがあり、外国人観光客も多数訪れる。古都メクネスは1996年世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)に登録された。
[藤井宏志]
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