日本大百科全書(ニッポニカ) 「モイ諸族」の意味・わかりやすい解説
モイ諸族
もいしょぞく
Moi
ラオス南部、カンボジア東部からベトナム南部の山岳地帯に住む人々の総称。長い歴史を通じてほとんど行政的に統一されることなく、搾取と略奪の対象であったため、支配的民族によってさまざまな蔑称(べっしょう)でよばれてきた。ラオスではカーKha、カンボジアではプノンPnong、そしてベトナムではモイなどで、いずれも野蛮人、奴隷などの意でよばれてきた。しかし現在では50年以上にわたるフランスの植民地支配を反映して、フランス語でモンタニャールmontagnard(山岳民族)、ベトナム語でも一般にトゥーンThuongと総称されるようになった。人口はベトナムだけで約300万人。モイ諸族に共通の文化的特質といったものは少なく、数十もの種族に細分され、言語もモン・クメール語族にマライ・ポリネシア語族が混在し、民族の起源の多元性を示唆している。
数少ない同質性の一つは、山地を移動しながら焼畑耕作によって陸稲やトウモロコシを栽培することであるが、最近では定住の傾向にある。シャーマニズムや門歯を削る風習をもち、竹が山岳民族全体に重要な意味をもっている。竹は家屋の材料であり、水を運ぶ容器、農具、米を炊く釜(かま)の役割、楽器や狩猟用具となり、さらに籠(かご)やざるをつくるなど幅広く利用されている。
[片多 順]