日本大百科全書(ニッポニカ) 「もうろう状態」の意味・わかりやすい解説
もうろう状態
もうろうじょうたい
twilight state
意識障害の一種。意識狭縮すなわち意識野が狭くなった状態に種々の程度の意識混濁が加わり、これに幻覚、錯覚、不安、徘徊(はいかい)などを伴った特有の状態で、意識変容状態の一つに数えられる。患者は、外界の認知はできるが、意識野が狭まっているので注意や関心の範囲は極度に狭く、外界を全体として把握することはできない。軽症のものでは、その行動は外見的に異常がなく、分別もうろう状態とよばれるが、重症のときには、いわゆる夢遊病者のようにうつろな表情で徘徊し、幻視、錯覚、不安、抑制欠如などが現れ、ときに唐突な行動や衝動行為を示し、あとでその間のことを十分には追想できない。
もうろう状態には、てんかん性もうろう状態、ヒステリー性もうろう状態、アルコール酩酊(めいてい)時や薬物中毒時のもうろう状態などがある。てんかん性もうろう状態には、発作性もうろう状態、発作後もうろう状態(脳波は全般性徐波化)、脳波の強制正常化を伴うものなどがある。ヒステリー性もうろう状態では意識混濁はなく、誇張的・演技的色彩を伴う。交代人格(交代意識)やガンザーGanser症候群(偽痴呆(ちほう)、小児症、的外れ応答などを伴い、おもに拘禁時にみられる)もヒステリー性もうろう状態に数えられる。
[大熊輝雄]