錯覚(読み)さっかく(英語表記)illusion

翻訳|illusion

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

錯覚
さっかく
illusion

対象が特殊な条件のもとで,通常の場合とは食違って知覚される現象。知覚器官や中枢部に異常がなくてもしばしば起るので,病的現象と断定することはできず,「対象のない知覚」つまり幻覚とは区別される。視覚について現れる覚 (錯視) が最も多く知られており,ミュラー=リヤーの図形ネッカーの立方体の見え方,あるいは月の錯視などがその例である。触覚的錯覚については,アリストテレスの錯覚が古くから知られており,大きさと重さの関係に関しては,シャルパンティエ効果が知られている。

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デジタル大辞泉の解説

さっ‐かく〔サク‐〕【錯覚】

[名](スル)
2から転じて》思い違い。勘違い。「錯覚を起こす」「錯覚に陥る」「愛されていると錯覚する」
心理学で、刺激または対象の客観的事実を違ったものに知覚すること。→幻覚

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百科事典マイペディアの解説

錯覚【さっかく】

ある特別な条件の場合に,ある対象が通常の場合よりも著しく異なって知覚される現象をいう。多くの場合,視覚的に生ずる(錯視)が,触覚,運動感覚等にもみられる。次の三つに分けられる。1.不注意錯覚 不注意な状態で誤字・脱字をするように,見落としや見のがし,見誤りのようなミスをおかす場合。2.感動錯覚 恐怖や期待,不安などの強い感情によって,物影が人の影に見えたりする場合。3.パレイドリア 壁のしみなどの感覚印象に空想が加わって人の顔に見えるなど,明瞭な心像を形成する場合。→幻覚

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世界大百科事典 第2版の解説

さっかく【錯覚 illusion】

知覚に関係する諸器官になんら異常がないのに,実際とは違った知覚が起こったり,実際の知覚に,そこにないものの知覚や思込みが加わる現象。これらは視覚,聴覚,触覚などの五感の領域に出現するほか,身体が動いていないのに動いている感じ,足を曲げているのに伸ばしている感じなど,運動感覚,位置感覚などの内部感覚にも起こる。 錯覚はその出現様式によっていくつかの型に区別される。(1)書物の文章の誤植が見落とされるように,注意の向け方が不十分なとき別の知覚要素が補ってしまう不注意錯覚。

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大辞林 第三版の解説

さっかく【錯覚】

( 名 ) スル
事実とは異なるが、そうであるかのように思うこと。思い違い。勘違い。 「まるで外国へ行ったような-を起こす」
〘心〙 あるものについての知覚が客観的事実と著しく食い違うこと。 → 幻覚

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

錯覚
さっかく
illusion

対象の大きさ、形、色、明るさなどの関係が、対象の客観的な関係と著しく食い違って知覚される現象をいう。本の誤植を気づかずに読んでしまう場合のように、注意すれば訂正できる錯覚(校正者の錯覚)もあるし、怖がりが縄をヘビと間違える場合のように、知覚する人の感情状態による錯覚もある。しかし、現代の心理学では、錯覚とは、病的な異常条件や心理的変動にあまり影響されない通常の状態において生じる知覚現象をいう。
 錯覚は、実際に刺激または対象があって、それの誤った知覚であり、常態においていつも認められる現象である。「幻覚」はこのような刺激や対象のない知覚であり、アルコール中毒、高熱などの異常状態において経験される。「妄想」は病的状態において生じる誤った判断で、直観的確信に基づく訂正不可能な思考内容の異常である。錯覚は多種多様であり、妥当な分類法はまだ見当たらないので、便宜的に感性領域によって錯覚全体を次のように分類する。[今井省吾]

錯視

視覚における錯覚で、大部分の錯覚がこれに含まれる。錯視は知覚の誤りではなく、なんら特殊な異常な現象ではなく、正常な視知覚現象である。錯視をさらに分類すると、次のとおりである。(1)幾何学的錯視とよばれる多種類の現象。(2)多義図形(または曖昧(あいまい)図形)による錯視。(3)逆理図形(または矛盾図形)による錯視。(4)月の錯視 月や太陽が水平線、地平線に近いときには、中天に高くあるときに比べて大きく見える現象。(5)対比錯視 明るさ、色の対比と図形の大きさ対比などがある。(6)運動の錯視 静止しているものが動いて見えたり、動いているものが静止して見える現象。これには仮現運動、誘導運動、自動運動、滝の錯視などの運動視現象が含まれ、「運動知覚」の問題として扱われている。(7)勾配(こうばい)の錯視 下り勾配なのに上り勾配と見誤ったり、緩い上り勾配を険しい上り勾配と見誤ったりする錯視現象。自動車による道路交通事故の原因となることがある。(8)方向づけの錯視 空間の方角や位置の誤った知覚。正しい方角と、180度または90度、方向感が食い違うことが多い。[今井省吾]

触覚的錯覚(アリストテレスの錯覚)

人差し指と中指を交差させ、その間に細い棒を挟むと、棒が2本に感じられる錯覚。[今井省吾]

運動感覚の錯覚(大きさ・重さの錯覚)

同じ重さのものでも、体積の小さいもののほうが、大きいものよりも重く感じられる現象。シャルパンティエの錯覚Charpentier's illusionともいう。[今井省吾]

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世界大百科事典内の錯覚の言及

【アリストテレスの錯覚】より

…触覚に関する錯覚の代表例。手の指を交差させて,その間に豆や棒を挟むと,豆が2個あるいは棒が2本に感じられる錯覚。…

【イリュージョニズム】より

…造形芸術,とくに絵画において立体感や奥行きの錯覚を与える造形技法とその表現をさす。トロンプ・ルイユ(目だまし)という言葉で呼ばれることもあり,その区別は明確ではない。…

【譫妄】より

…軽度の意識混濁を背景に,活発な錯覚幻覚などの陽性症状を示す最も代表的な意識変容の形。外界は夢のように変容し,周囲の人や物は鬼や怪物などに錯覚され,さらに恐怖の,ときには楽しい場面の情景的な幻覚がつぎつぎに不連続的に現れる。…

※「錯覚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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