精選版 日本国語大辞典 「ものだ」の意味・読み・例文・類語
もの‐だ
- 〘 連語 〙 ( 名詞「もの」に断定の助動詞「だ」の付いたもの ) 活用語の連体形を受け、強調の気持をこめる。→もの(物)[ 一 ][ 四 ]②。
- [ 一 ] 「…ものだ(もので)」、または「…ものじゃ」の形で用いる。
- ① 物事を客観的に説明し、一般的にそうである、という意を強調する。
- [初出の実例]「小童がをやに行き合うては、よろこんでほかといだきつくものだぞ」(出典:寛永十年刊本無門関鈔(17C前)下)
- ② 感慨をこめて物事を詠嘆的に述べる。
- ③ 希望の「たい」や様態の「そうだ」などを受けて、希望や推量の気持を強調する。
- [初出の実例]「団子がくいたいものだ」(出典:黄表紙・高漫斉行脚日記(1776)中)
- 「お玉が尋ねて来さうなものだと、絶えずそればかり待ってゐる」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉八)
- ④ 当然そうすべきである、または、そうしてはいけないという意を強調する。
- [初出の実例]「矢根疵を手にてぬかないものだ」(出典:雑兵物語(1683頃)下)
- ⑤ 「…もないものだ」の形で、そのような事態は許しがたい、非常識なことだという話し手の気持を強調する。
- [初出の実例]「馬鹿馬鹿しい、銭を出して、あの醜態を見せられて、置去を吃(く)ふ奴も無いものだ」(出典:義血侠血(1894)〈泉鏡花〉六)
- ⑥ 疑問詞を添えて、「どうして…なぞするのか」という反語を表わす。
- [初出の実例]「子供ぢゃあなし、なんで塞河原へ行くものだ」(出典:歌舞伎・佐野常世誉免状(鉢の木)(1775)上)
- ① 物事を客観的に説明し、一般的にそうである、という意を強調する。
- [ 二 ] 「…ものではない」「…ものじゃない」、または「…ものでもない」の形で用いる。
- ① 現実の状況を示したり、ある条件を想定したりして、それに伴う物事を強く否定する意を表わす。
- [初出の実例]「小遣ひは一文もなし、その上にこき使はれては、どんすねどもがたまるものぢゃないわい」(出典:歌舞伎・鳴神(日本古典全書所収)(1742か))
- ② 好ましくない内容の動詞を受けて、そう否定的に見るべきではないという意を強調する。
- [初出の実例]「海を控へての景色は万更捨てたものではない」(出典:東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉二月暦)
- ③ 当然そうしてはいけないとして、ある行為を制止する意を表わす。
- [初出の実例]「日本橋ですり違ふても、彌三が馬見たつらで、詞もかくるものではない」(出典:談義本・教訓雑長持(1752)三)
- ④ 否定を含む推量「まい」を受けて、「まいものでもない」の形で、…しないとも限らない、…する可能性があるという意を表わす。
- [初出の実例]「大毒虫、嫁君のお部屋さき、御膳廻りへ落入るまい物でもない」(出典:浄瑠璃・関八州繋馬(1724)二)
- ① 現実の状況を示したり、ある条件を想定したりして、それに伴う物事を強く否定する意を表わす。
ものだの補助注記
( 1 )丁寧体では「ものです」となる。
( 2 )「ものだ」の「だ」のかわりに「さ」「よ」「ね」を添えて用いることもあった。