ものだ

精選版 日本国語大辞典 「ものだ」の意味・読み・例文・類語

もの‐だ

連語〙 (名詞「もの」に断定助動詞「だ」の付いたもの) 活用語の連体形を受け、強調の気持をこめる。→もの(物)(一)(四)②。
[一] 「…ものだ(もので)」、または「…ものじゃ」の形で用いる。
物事を客観的に説明し、一般的にそうである、という意を強調する。
※寛永十年刊本無門関鈔(17C前)下「小童がをやに行き合うては、よろこんでほかといだきつくものだぞ」
感慨をこめて物事を詠嘆的に述べる。
(イ) 現在の事実や心境についていう場合。
滑稽本浮世床(1813‐23)初「あんまり夫婦中の能(いい)のもこまったものだ」
(ロ) 過去の出来事や過去の習慣的なことなどを回想していう場合。
※画の悲み(1902)〈国木田独歩〉「自分を独で置けば画(ゑ)ばかり書いて居たものだ」
③ 希望の「たい」や様態の「そうだ」などを受けて、希望や推量の気持を強調する。
※黄表紙・高漫斉行脚日記(1776)中「団子がくいたいものだ」
※雁(1911‐13)〈森鴎外〉八「お玉が尋ねて来さうなものだと、絶えずそればかり待ってゐる」
④ 当然そうすべきである、または、そうしてはいけないという意を強調する。
※雑兵物語(1683頃)下「矢根疵を手にてぬかないものだ」
⑤ 「…もないものだ」の形で、そのような事態は許しがたい、非常識なことだという話し手の気持を強調する。
※義血侠血(1894)〈泉鏡花〉六「馬鹿馬鹿しい、銭を出して、あの醜態を見せられて、置去を吃(く)ふ奴も無いものだ」
疑問詞を添えて、「どうして…なぞするのか」という反語を表わす。
歌舞伎・佐野常世誉免状(鉢の木)(1775)上「子供ぢゃあなし、なんで塞河原へ行くものだ」
[二] 「…ものではない」「…ものじゃない」、または「…ものでもない」の形で用いる。
① 現実の状況を示したり、ある条件を想定したりして、それに伴う物事を強く否定する意を表わす。
※歌舞伎・鳴神(日本古典全書所収)(1742か)「小遣ひは一文もなし、その上にこき使はれては、どんすねどもがたまるものぢゃないわい」
② 好ましくない内容の動詞を受けて、そう否定的に見るべきではないという意を強調する。
※東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉二月暦「海を控へての景色は万更捨てたものではない」
③ 当然そうしてはいけないとして、ある行為を制止する意を表わす。
談義本・教訓雑長持(1752)三「日本橋ですり違ふても、彌三が馬見たつらで、詞もかくるものではない」
④ 否定を含む推量「まい」を受けて、「まいものでもない」の形で、…しないとも限らない、…する可能性があるという意を表わす。
浄瑠璃・関八州繋馬(1724)二「大毒虫、嫁君のお部屋さき、御膳廻りへ落入るまい物でもない」
[補注](1)丁寧体では「ものです」となる。
(2)「ものだ」の「だ」のかわりに「さ」「よ」「ね」を添えて用いることもあった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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