改訂新版 世界大百科事典 「モモノヒメシンクイ」の意味・わかりやすい解説
モモノヒメシンクイ (桃の姫心喰)
Carposina niponensis
鱗翅目シンクイガ科の昆虫。翅の開張1.8cm内外。前翅は灰色または暗い灰褐色,前縁と基部は黒褐色で,翅の中央部は前縁から後縁まで帯状に暗色。北海道から屋久島までの各地と,朝鮮半島,中国,ロシアの南東部に分布する。寒地では年1回,温暖地では年2~3回発生する。幼虫はリンゴ,モモの果実を加害する重要な害虫で,野生のズミの果実を食べる。卵は果実の表面に産みつけられ,10日前後で孵化(ふか)した幼虫は,直ちに果実内に食入する。成長した幼虫は体長1.5cmくらい。老熟して果実外へ脱出するときには美しい赤色に変わるが,果実内で食害している時期には黄白色。幼虫は地中1~3cmのところに丸い繭をつくってその中で越冬し,翌春繭から出て,新たに紡錘形の繭をつくりなおしてその中で蛹化(ようか)する。成虫の出現期は地域によって異なるが,関東地方では6~8月に見られ,夜行性で灯火に飛来する。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報