日本大百科全書(ニッポニカ) 「モレア年代記」の意味・わかりやすい解説
モレア年代記
もれあねんだいき
14世紀前半に書かれた韻文(9000行以上)による年代記。作者は、モレア(ペロポネソス)のギリシア化したフランク人ともいわれるが、不詳。1204年から92年にかけてのペロポネソスにおけるフランク支配を主題とし、ついで第1回と第4回の十字軍の歴史を扱う。著者は反ビザンツ的姿勢を鮮明にするが、この年代記は西欧とビザンティン帝国の混合文化の記念碑として重要である。ことに、フランク語の影響を受けたビザンツの口語研究にとっては欠かすことのできない史料である。15音節による韻文(口語)が初めて歴史描写に用いられている。フランク語、アラゴン語、イタリア語のそれぞれの翻訳が、ギリシア語の原本からつくられている。
[和田 廣]