翻訳|Karachi
パキスタン南部、アラビア海に臨む同国最大の都市。インダス川河口の西方に位置し、同国最大の港湾都市でもある。1947年の独立時から1959年までは仮首都であった。人口926万9265(1998)、1491万0352(2017センサス)。年降水量は204ミリメートルと少なく乾燥地帯に属するが、市の中心部が、北のラヤーリ川と南のマリール川との間に形成された低湿なデルタ上にあるため、洪水の被害を受けやすい。市の南と南西にはマングローブの生える塩水性湿地が広がり、その中央部を南北に縦断するように港がつくられている。
紀元前325年、アレクサンドロス大王の東征の帰途、部将ネアルコスが南西モンスーンの終わるのを待ったというサンダカの港はこの湿地に比定されている。以後カラチは歴史に登場せず、やっと1725年になってここに小要塞(ようさい)と漁村があったことが判明している。1839年にイギリスはここを領有してインダス川流域攻略の拠点とし、1843年のシンド領有後はここにその州都を定めた。19世紀を通じてカラチは同川流域地方さらにはアフガニスタンの外港として成長していった。とくに1861~1865年のアメリカ南北戦争によるパンジャーブ産綿花への需要拡大、また用水路灌漑(かんがい)の発展による同地方の農業生産の拡大は、カラチの港湾機能を拡充させ都市形成を促進させた。人口も1941年には35.9万に達した。当時のカラチは、港湾地区、その北東に接するデルタ上のシティとよばれる商業地区、その東方の高台にあるイギリス人の官庁・高級住宅地区(シビル・ライン)、さらにその南東に広がるカントンメントとよばれる軍隊駐屯地の四つから構成された地方の中心都市にすぎなかった。しかし1947年のインド、パキスタンの分離、独立により、急遽(きゅうきょ)パキスタンの仮首都が置かれ、また多数のイスラム教徒がインドから流入してきた。人口は、1951年には111.9万、1961年には191.3万へと激増した。市街地も、北方および北東方を中心に周辺部に大きく拡大していった。高級住宅地を主とする北東方地区を除くと、これらの新しい都市化地区には多くの不良住宅地区が形成され、カラチの都市問題の一つとなっている。工業もこれらの周辺地区に発達し、紡績、セメント、電機、化学肥料、また海岸部には石油精製、製鋼などの工業が立地し、同国第一の工業化基地となっている。これらの工業の多くは流入者への雇用の拡大をも目的としている。人口急増につれ水不足が著しく、飲料用水源は193キロメートル離れたインダス川に仰いでいる。
[応地利明]
パキスタン最大の都市で,独立以後1959年までの仮首都。人口934万(1998)。インダス河口西方に位置する。市の中心部は潟湖に流入するラヤーリ川とマリール川との間の三角州上にある。前325年にネアルコスがアレクサンドロス港と名づけ風待ちをしたサンダカはカラチに比定されている。1824年にイギリスはここを領有し,シンド,パンジャーブ攻略の拠点とした。その攻略後,カラチはインダス川流域およびアフガニスタンの外港となり発展し始めた。とくに1861-65年のアメリカ南北戦争によるインド綿需要の急増,つづく内陸鉄道網の整備によって都市発達が加速された。しかし人口は1891年には9万8000にすぎなかったが,1941年には35万9000に増加し,独立時のインドからの難民の流入をうけて51年には111万9000へと激増し,さらに61年には191万3000に達した。独立時の都市構成は,潟湖南東部にカラチ港が建設され,それに接する低湿な三角州上のシティと呼ばれる商業地区,その東方の高燥地のシビル・ラインと呼ばれる官庁・高級住宅地,その背後のカントンメント(兵舎地区)であった。独立以後は旧市街の外側に衛星都市状の新開地が広がり,そこには高級および下層住宅地のほか,化学,電気,機械,石油精製,セメントなどの新しい工業が立地し,同国の工業化の拠点をなしている。年降水量204mmの海岸砂漠にあるため,水不足は著しく,飲料用水は井戸のほか193km離れたインダス川からパイプで送水している。
執筆者:応地 利明 また,バーンズ・ガーデンBurns Gardenにあるカラチ国立博物館は,1951年創設され,70年に現在の地に新築開館されたパキスタン唯一の国立総合博物館である。先史,仏教・ヒンドゥー教,ムスリム,写本・貨幣,民族学の各室があり,なかでも先史室のインダス文明の遺品や,仏教・ヒンドゥー教室のガンダーラ彫刻は注目に値する。
執筆者:肥塚 隆
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